結局優れたWebデザインとは何なのか?
こんにちは、Webデザイナーです。
この職についてから2年近くが経ちました。タイトルの「結局優れたWebデザインとは何なのか」、これは私の中で何度も思い浮かんではスルーしてきたテーマの一つです。ただこの仕事をしていると様々な方の意見や思想に触れる機会があるので、なんとなくこういうものは良くて、こういうものは良くないんだろうな、というふわっとした基準はありました。それでも具体的に自分の力で言語化したことはなかったので、自分の頭を整理するためにもここで一度アウトプットをしてみたいと思います。
最初にこの記事の結論だけ記載しておきます。これはあくまで現時点で、という話にはなりますが、私は優れたWebデザインを「目的へのアプローチが上手いデザイン」と定義しました。以下ではそう定義した理由について解説していきます。
「優れている」とは
まず「優れている」とはどういうことなのかの定義から始めます。
「優れる」を辞書で引くと、以下のように記載されています。
ここでは「能力・容姿・価値など」と表現されていますが、これは対象となる要素の本質がどこにあるかによって使用する物差しが変わることを意味しています。例えば以下のようなことが言えそうです。
スポーツマン→能力が高いと優れている→スポーツマンの本質は「能力」
モデル→容姿が美しいと優れている→モデルの本質は「容姿」
貴金属→価値が高いと優れている→貴金属の本質は「価値」
※もちろんこの辺りの考え方は人それぞれです
ここからわかる通り、優れている状態というのはものによって定義が異なります。Webデザインの「優れている」を理解するには、Webデザインそのものが一体どういったものなのか、その本質を理解する必要がありそうです。
ではそれを探るためにまずはそもそものWebデザインの土台であるWebサイトの本質について考えたいと思います。
Webサイトの本質とは
私はWebサイトの本質を「機能」だと捉えています。なぜならWebサイトは企業、または個人が用いるマーケティング手段のうちの一つだと考えられるからです。
例えば、Webサイトを用いてある製品を、ある企業を、ある人物を、あるコンテンツを、知ってもらいたい、買ってもらいたい、好きになってもらいたい、利用してもらいたい。人がWebサイトを必要とする理由は場合により様々ですが、これらは全て、閲覧からのアクションを目的としているという部分で共通しています。このことから、我々はWebサイトにマーケティングとしての機能を求めている、ということが分かります。言ってしまえば最終的にこの行動喚起が成せるのであれば、必ずしもWebサイトという手段を用いる必要はありません。別にメールでもSNSでもCMでも野外看板でもいい訳です。
ではなぜ数あるマーケティング手段の中でWebサイトを選択したのかというと、それは最終的に到達したい目的に対して、Webサイトの持つ「機能」が最も有効だと考えたからですね。このことから、人は本質的には「機能」を求めてWebサイトを必要とする、ということが分かります。即ち言い換えれば、Webサイトは「機能」という本質を持っている、となる訳です。
Webサイトは複数の機能を持っているので、ここで求められている「機能」は到達したい目的に対して様々です。例えばある企業が、「自社製品について明確なイメージのようなものをユーザーに訴求できていない」というような課題を持っていたします。この場合Webサイトに求める機能は「ブランディング」です。Webサイトに訪れ、製品のコンセプトや背景、歴史等を、画面上の画像やテキストのコンテンツから知ってもらうことが目的となりそうです。またある企業が「人員が足りておらず、営業にかかるコストを減らしたい」という課題を持っていたとします。この場合Webサイトに求める機能は「営業活動の効率化」です。コンテンツSEOによる認知拡大や、MAによる省人化が期待されるかもしれません。
ではWebサイトの本質が定義できたところで、次は本題のWebデザインについて考えていきます。
Webデザインの本質とは
最初にWebデザインとは何なのか、というところを確認しておきたいと思います。
ここで注目したいのが「グラフィックデザイン的な要素を多く含む一方で、対話的な要素を持つWWW(ウェブ)の性格上、情報デザインあるいは工業デザイン的なスキルも求められる。」という部分です。私はこの情報デザインのスキルが必要というところに肝があると考えています。
一般的に「デザイン」という言葉に「ビジュアル」とイコールのような認識がされているため勘違いしがちですが、「Webデザイン」とはユーザーとWebサイトの境界、重要な接点であるUIについて責任を持つ行為であり、それを美しく整えることだけを指すものではありません。本来の役割は、ユーザーがサイトに訪れ、どのように情報に触れ、どのような体験を得、どのような行動に出るか、この一連のフローをまさに「デザイン」することです。ビジュアルを整えるというのはその延長線上にある結果的な行為にすぎません。(その為度々UI/UXデザイナーといった言葉が用いられます)
この「どのように」の部分に、先ほど定義したWebサイトの本質が関係してきます。Webサイトは複数の「機能」という本質を持っているという話だったので、Webデザイン側もそれに応じた振る舞いをする必要があるはずです。
先ほども例に挙げた、「自社製品について明確なイメージのようなものをユーザーに訴求できていない」企業で再度考えてみます。これは分かりやすく、Webデザインが主役に近い例です。「ブランディング」が必要になるので、ユーザーがWebサイトに訪れ、情報を得ることで製品についての明確なイメージを抱くようになるUIを設計することがWebデザインの達成目標です。製品のコンセプトや背景を深く理解した上で、それを表現する背景や画像、アニメーションなどを用い、テキストが自然と目に入るようなデザインを作成することが求められるはずです。
また「人員が足りておらず、営業にかかるコストを減らしたい」企業でも考えてみましょう。こちらは「営業活動の効率化」が求められるため、ユーザーが訪れた際に情報を取得しやすく、必要なタイミングで間違いなくコンバージョンを得られるような設計がWebデザインの達成目標になりそうです。製品についての情報にアクセスしやすいようリンクは整然とまとめられていて、ニーズが発火した瞬間すぐにお問い合わせしてもらえるよう、CTAボタンは非常に目立つ位置に設置されるのではないでしょうか。
これらはあくまで一例で、実際にはもっと詳細な目的設定のもと、それに最適かく確実なデザイン設計が求められます。ただ一つ言えるのは、やはりWebデザインは、Webサイトの目的に応じて大きく考え方を変える必要があるということです。
これらのことから、私はWebデザインの本質は「Webサイトの目的に沿い、その機能を最大限発揮させること」だと考えました。
「優れたWebデザイン」とは
ここまで来れば「優れたWebデザイン」を定義できそうです。
Webサイトは「機能」という本質を持っています。この機能は複数あり、その中でも求められる機能は目的によって様々です。Webデザインはその目的に沿い、かつWebサイトが求められている機能を最大限発揮できるような形をとる必要があるということでした。
以上より、私は「優れたWebデザイン」を「目的へのアプローチが上手いデザイン」と定義したいと思います。
Webデザインのありがちな間違い
考えておきたいのがWebデザインに対するありがちな間違いについてです。恐らくデザインに関わらない方や成り立てのデザイナーが最初に「優れたWebデザイン」として思い浮かぶのが「美しいWebサイト」だと思います。私もなりたての頃はギャラリーサイトに載っているような美しいWebサイト目指して制作をしていました。見てここまで読めばお分かりだと思いますが「美しい」と「優れている」がイコールとなるのはブランディング目的等かなり限られた場合のみです。実際の効果測定の難しさに対して、「美しい」ことは評価として直感的に分かりやすいので、多くの人に魅力的に見えてしまうのかもしれません。
そもそも指名検索がメインのWebの世界では、ブランディングの場合プロジェクトに際して広告を伴う必要がある等、必ずしもマッチしているとは言い難いような気がします。そのため、「美しい」ことが「目的へのアプローチ」として適切であることは非常にまれです。
まとめ
繰り返しになりますが、私は「優れたWebデザイン」を「目的へのアプローチが上手いデザイン」と定義しました。ひとまず今後はこの基準に乗っ取って制作を行いたいと思います。ただしこの考え方も経験を積むにつれて変わっていくかもしれないので、その時は改めて整理して記事にまとめようと思います。
最近UI分析をした以下のサイトはこの基準で考えても非常に「優れたWebサイト」であるように思います。こちらもぜひ読んでいただけると幸いです。
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