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違法と合法の間には、フェアでクリアな線がある?

【おことわり】
掲載期間が長いため、各種報道のリンク先には原則として、産経新聞のものを優先して貼り付けています。
地元紙の中国新聞の記事については、有料会員にしか読めないものがあることをご了承ください。

昨年7月に行われた参議院議員選挙。
定数2の広島選挙区では、立民・国民・社民が推薦する野党系の森本真治・議員(以下、森本氏)がトップ当選を果たしました。
自民党は2議席独占を狙って二人の候補者を擁立しましたが、新人の河井案里・元広島県議会議員(以下、案里氏)が得票数2位で初当選を果たした一方で、6回目の当選を狙った大ベテランの溝手顕正・元国家公安委員長(以下、溝手氏)が落選する番狂わせとなり、2議席独占は叶いませんでした。

★第25回参議院議員通常選挙(NHK)
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/2019/34/skh43424.html

その後に行われた9月11日の内閣改造では、案里氏の夫で衆議院議員の河井克行氏(以下、克行氏)が法務大臣として入閣しましたが、翌月末に発売された週刊文春(11月7日)号で公職選挙法違反疑惑を報じられると、克行氏は当日中に法務大臣を辞職
そして、今年3月3日に克行氏の政策担当秘書、案里氏の公設秘書、陣営スタッフの3人が逮捕されたのに続き、6月18日には河井夫妻も逮捕されるに至りました。

名前が出た首長・議員は全て『買収』されたと言えるのか?

ところで、昨年10月末に公職選挙法違反疑惑が報じられて以降の注目点の一つに、『いったい誰が河井夫妻から現金を受け取ったのか』がありますが、7月3付の週刊朝日中国新聞のリストなどを比較検討すると分かるように、河井夫妻から現金を受け取った議員の名前、金額、時期、場所などはある程度、明らかになっています。

さて、それら報道にある『買収リスト』の中には、克行氏の選挙区である安佐北区選出で比較的早い時期から名前が挙がっていた渡辺典子・広島県議会議員(以下、渡辺氏)の名前がありますが、渡辺氏について地元紙の中国新聞は次のような形で報じています。

★渡辺典子氏についての中国新聞(地元紙)による報道
 ● 1月20日

  河井案里氏の公選法違反疑惑で渡辺典子県議が会見
  河井案里氏疑惑 広島県議が家宅捜索受ける 違法行為「一切してない」
 ● 1月23日
  報酬疑惑、追及を本格化 河井夫妻周辺の聴取続く
 ● 4月9日
  【速報】広島県議会の桧山元議長と渡辺典子県議の事務所を捜索 河井夫妻疑惑【動画】
  桧山元議長事務所を捜索 河井陣営買収疑惑、渡辺県議宅も【動画】
 ● 4月28日
  広島県議会の控室を家宅捜索 河井陣営買収疑惑で広島地検【動画】
 ● 5月 3日
  広島の渡辺県議 自白強要と主張 最高検に調査要請書
 ● 6月26日
  首長・議員31人受領認める 河井前法相夫妻買収事件、18人実名証言

参議院議員選挙のあった昨年、『河井陣営から20万円を受け取った』とことを理由に『買収』されたと言われている渡辺氏ですが、『買収』されたと言えるのかどうか疑わしいだけでなく、『買収』されたと言うには相当の無理があると言われています。

そこで、渡辺氏が政治家としての道を歩き始めた平成25年以降に渡辺氏の後援会になされた寄附行為について、広島県選挙管理委員会が公開中の『政治資金収支報告書の概要と要旨』から、現時点で公開されている最新の平成30年分までの概要をさかのぼって確認します。

★渡辺典子氏による政治資金収支報告より抜粋
 ● 平成30年分(192ページの右下)
  https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/370042.pdf
  ・自由民主党広島県支部連合会   30万円
  ・自由民主党広島県第三選挙区支部 20万円
 ● 平成29年分(185ページの左中ほど)
  https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/331745.pdf
  ・自由民主党広島県第三選挙区支部 20万円
  ・自由民主党広島県支部連合会   30万円
 ● 平成28年分(205ページ右下から206ページ左上)
  https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/259477.pdf
  ・自由民主党広島県支部連合会   75万円
 ● 平成27年分(225ページ左中ほど)
  https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/225426.pdf
  ・自由民主党広島県支部連合会   10万円
 ● 平成26年分(213ページ左下から右上)
  https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/191297.pdf
  ・自由民主党広島県支部連合会   15万円
 ● 平成25年分(271ページ左中ほど)
  https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/147935.pdf
  ・政党などからの寄附ナシ

ご覧いただいて分かるように渡辺氏の後援会に対しては、自由民主党広島県支部連合会からは平成26年以降の毎年、克行氏が代表を務めていた自由民主党広島県第三選挙区支部からは平成29年以降の毎年、寄附がなされています。
案里氏の当選した参議院選挙の年に受け取った寄附金を理由に『買収』が成立するのなら、政治資金収支報告書が公開されている平成30年までのうち、平成26年以降に自由民主党広島県支部連合会から寄附された160万円、克行氏が代表を務めていた自由民主党広島県第三選挙区支部から寄附された40万円でも『買収』が成立するのではないでしょうか。
自民党からの寄附金額の総額だけを見ると、参議院選挙の行われた平成28年の寄附金額75万円が突出しているわけですが、その年の参議院選挙で『買収』は無かったのでしょうか。

また、渡辺氏は克行氏が代表を務めていた自由民主党広島県第三選挙区支部からの平成29年以降の寄附については、6月27日のFacebookへの投稿の中で次の説明しています。

★ 渡辺典子氏によるFacebookへの投稿、6月27日分より抜粋・転載
これまでも説明させて頂いております通り、私は河井克行さんから違法な金品を一切受け取っておりません。
私は、平成29年から、毎年、20万円を、河井克行さんが支部長である自由民主党広島県第三選挙区支部から私の政治団体への政党寄付金として受け、政治資金収支報告書にも記載して適法に処理してきました。夏前に10万円、年末に10万円の寄付を受けるのが通例でした
昨年も、5月下旬に、例年通り、同支部より政党寄付金として10万円を頂き、政治資金収支報告書にも記載しております。資料として添付致します。
なお、昨年末は、一連の疑惑報道もあり河井克行さんと連絡が取れなくなっており、例年の10万円の政党寄付金は受け取っておりません。

私が受け取ってきた政党寄付金は、選挙とは無関係なもので、昨年になって、突如として投票取りまとめ等の趣旨でされたものではありません。検察の取調べに対しても、このような経緯は一貫して述べております。

地元のテレビや新聞で報じられることの極めて少ない渡辺氏の主張については、フェイスブックへのリンクを示しますのでご確認ください。

★ 渡辺典子氏によるFacebookへの投稿 
 ● 1月30日
 https://www.facebook.com/watanabenoriko0725/posts/2734520739950692
 ● 5月 4日
 https://www.facebook.com/watanabenoriko0725/posts/2946522358750528
 ● 6月27日
 https://www.facebook.com/watanabenoriko0725/posts/3083849278351168

日頃の生活の中でこの件について話すと、渡辺氏を含め、名前の挙がった首長・議員は全て『買収』されたことになっているのですが、先ほども申し上げたように、少なくとも渡辺氏については『買収』されたと言い難いのではないでしょうか。

まだまだ残る謎

渡辺氏が『買収』されたと言えるのか以外にも、今回の事件では多くの謎が残されたままとなっています。


これまでに名前が出ていない首長・議員に、買収された人物はいないのでしょうか。


買収した側だけが逮捕され、買収された側が逮捕どころか何ら処分されていないのは何故なのでしょうか。
買収した側だけが裁かれて買収された側が裁かれない現状からは、経済評論家の高橋洋一氏も疑問を呈しているように、極めて『アンバランス』な裁判となっています。

★河井前法相と案里被告初公判~なぜ現金受領した100人は不処分なのか
  https://news.1242.com/article/241445

また、今回の事件の発端となった週刊文春の記事で問題とされていたのは、ウグイス嬢への日当が法定額の15,000円を超える30,000円だったことでしたが、ウグイス嬢は何らかの処分をされたのでしょうか。

今回の事件についての捜査と裁判を見ていると、

①処分を受ける人と受けない人との間にある《アウトとセーフの線引き》が不明確であること
②名前が出た人物に限ってもメディアによる追及に温度差があること
③名前が出ていない人間やウグイス嬢に逃げ得を許すこと

になりそうなため、このままでは民主主義の根幹をなす今後の《選挙》に大きな禍根を残す事件・裁判となることは確実と思われます。

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