ダブり〜1限目〜N

次の日、学校へ行くと教室にはエトウの姿はなかった。ホームルームが終わり、1限目が終わり、
2・3・4・・・と。

俺は、特に何も気にせず
ただ、いつもの通りに過ごしていた。
いや、振る舞っていただけなのかもしれない。
そして、次の日もその次の日も、エトウは
来なかった。

エトウの笑う顔を見て4日が経った頃
とうとう
副会長が俺にこう言った。
「会長?」
俺を呼ぶ
「はぁーぁ」
とめんどくさそうに返事した。
「なかなか言い出せなかったんだけど、
エトウ君来ないね」
「やっぱり、不安なのかな?だったら明日朝、
エトウくんの家に迎えに行ってみようよ」
俺は、こう言った。
「いや、俺はパスな」
「てか、お前は本当いっちょカミだな」
「ここから先は、俺たちがどうこうする事
じゃない。あいつが踏み出すかどうか次第だと俺は思う。だから、明日でも、来週でも、再来週でも、来年でも、、、俺たちは、あいつが来たときに、おはようって言ってやればいいんだ。
だから、行くならお前1人で行け」
と言うと
「わかった。」
とだけ言って、仲のいい友達のところへ行った。
そんな副会長の後姿を見ながら、
俺はこう思った。

「スカート短くねぇーかっ」と。


下校の時、モトキタに呼ばれた。
「コニシくん、今回は私の都合を押しつけて
ごめんね。明日から、私が行くから」
と言ってきた。
「親、大丈夫なのか?」
と聞くと
「もう、大丈夫だよ。ありがとう」
「もう、私の親も年だから身体のあっちこっちが痛いって言うの、コニシくんはまだ若いからそんな事ないかもだけどね」
と話した。
「そっかぁ、じゃーお疲れ」
と言うとモトキタは、笑顔で
「さようならでしょ。また明日」と言った。
俺は、
「あっ、」
と声をかけると、モトキタは振り返った。
「今回、悪かったなっ。エトウを来させる事は
出来なかったようだから」
と言うと
「全然、先生は嬉しかったよ、コニシくんがここまでやってくれて」と言ってくれた。


次の日俺は、事件にあった。
目覚ましのセットを忘れると言う大事件を
「ユウ、アンタ、学校は!?」
とヨシエが俺を起こす。
「ヤッバっ、完全に遅刻っ」
「アンタ、もうダブりはやめてよ」
とため息をつくヨシエを無視して
猛スピードで身支度をし、駅へ向かいホームへ
行くとこの日の俺は神が味方していた。

信号機のトラブルで電車が遅延していたのだ。

駅に着き、改札で延着証明を受け取り学校まで
歩く。そこに、同じくして遅れたやつが学校の周りをウロウロしていた。
俺は、気にせず校門に入ろうとすると
「コニシくん」
と俺を呼ぶ。振り返ったらそこには、

もう一度言うこの日俺には神が味方していた。


エトウだった。
俺は、嬉しかったがその感情は出さずごく普通に
「おはよう」
「お前も、電車遅れか?もう、始まってるぞ」
と言ってエトウを学校の中へ入れた。
「ごめんね。コニシくん、実は、、、」と
俺は、
「何誤ってんだ、そんな事どうでもいいから
とりあえず教室へ行くぞっ」
と言って俺たちは教室へ向かった。

ガシャーと教室の引戸を開けてると
モトキタが、
「社長出勤ね、早く席に着きなさい」
と言った。俺は、
「社長出勤かぁ、このクラスには社長が
もう1人いてる様だな」
と言って、エトウを中に入れた。
頭を下げるエトウ。
静まる教室内に、
「エトウ君、おはよう」
と言う声が響いた。副会長だった。
「おはよう」とエトウが言うと、
「おはよう」「おはよう」とクラスの奴らが
続いて言った。

「コニシくん、エトウくん、席について」
とモトキタが言った。
俺たちが席に着くと、
「はい、じゃー改めて出席を取ります」
と言って出席を取り始めた。
当たり前のように生徒の名前を呼ぶ、モトキタは
嬉しそうだった。

実は、こうだった。
あの次の日にエトウは学校へ行くつもりだった。
だが、家を出て駅まで行ったが引き返したらしい。
その次の日は、駅へ着き電車に乗ったが、やはり
不安で電車を一周して帰ったらしい。
そしてまた次の日、電車に乗り、電車を降りたが
引き返したようだ。
そして今日、学校まで来たが中に入れず迷っていたところで俺に会ったらしい。

今日は俺たちのLIVEの日だ。
LIVEは、見事に成功だ。
ステージを後にしたあと、「アンコール」と
声が響いた。

◆Fly Away◆
作詞 コニシユウ
作曲 OREnoAOHARU

翼がなくたってキミはキミだよ
今もこれからもずっとずっと
今踏み出したその大きな一歩
だから飛べなくてもいいんじゃない

きっと
見ていたよねこの青い空
(僕もキミも)
そっと
していたほうが良かったのかも知れないけど
(ボクは君を)
連れ出したかったから

あの日ついた優しい嘘
今は消えないかもしれないけど
いつか必ずもう一度あの雲の向こうへ

翼がなくたって君はキミだよ
今もこれからもずっとずっと
今歩き出したその小さな一歩
だから飛べなくてもいいんじゃない


あの日、君はこの鳥カゴで
折れた翼を抱いていたんだね
もしもう一度飛びたいのなら
僕達がキミの翼になるから

翼がなくたって君は君だよ
今もこれからもずっとずっとずっと
Re:start Flyaway
今走り出した背中に
翼が見えたから


ステージの上から客席へ礼をすると
そこには、副会長とエトウの姿があった。
副会長がエトウを誘ってくれたようだ。
飛び跳ねる副会長の横でエトウは笑っていた。

それから、エトウは毎日学校へ来る様になった。
クラスにも馴染んで来た頃
運動神経がいいエトウは怪我で野球はできない
代わりに陸上部へ入った。

ある日俺は帰り道に、運動場をふと見ると
エトウが走っていた。

すると後から
「かーいちょう、」
「待って」
と振り向くと副会長だった。
「どうした?そんな慌てて」
「今日暇?」
「暇だよね。じゃーアイス食べに行こ」
「はぁ〜?ってか暇じゃねーし」
「暇だよね?てか、暇でしょ?」
「あっ、エトウくーん」
副会長の声に気付いたエトウはこっちを見た
「部活頑張ってねー」
と、手を振りながら言う副会長。

手を振りかえして走り出したエトウの背中には
翼が見えた気がした。

「会長、アイス食べに行こっ」
と誘う副会長にながされるように
俺たちは、学校を出た。


そして、今日も
「はいっ、全員出席っ」
とまた、モトキタは笑顔で出席を取っていた。
                
               1限目おわり


























                1限目おわり

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