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柔術家に最推しのパスのスタイル(道衣)

私がブラジリアン柔術をはじめた15年前にはすでに、クローズドガードに対して蹲踞の姿勢(スクワットポジション)で構える技術が存在しました。

スクワットポジションは、クローズドガードからの攻め手が極端に減ってしまう為、非常にやっかいなスタンスです。

白帯の私には打つ手が無かったので・・・

(もう!またそれかい!)

っていつも思ってました。

クローズドガードに対してスクワットポジションをとるには、一度立たないといけないので、それなりに足腰が強い人が得意だったりします。

ここ数年はファブリシオ・アンドレイのように、オープンガード形態に対しても、スクワットポジションから攻めるような選手も出てきました。

彼のスクワットは常に綺麗にしゃがんでいるのではなく

  • 踵の上げ下げ

  • 股関節の内外旋

  • 上体の前後

といった微調整が行われています。

踵が床に着けば、重心が落ちて安定しますが、パスを仕掛ける初速が落ちます。股関節の内外旋による膝のコントロールで、相手の足の侵入を防ぎます。上体の前後により攻守のバランスをとります。

柔術のスクワットポジションは、ウェイトトレーニングのスクワット以上の股関節の機能性が求められます。

(フィジカル強い人向けのスタイルなんじゃないの?)

なんて思われるかもですが・・・

確かにファブリシオ・アンドレイのような選手が使っていると、パワフルな選手向きのスタイルに見えます。しかし、姿勢さえとれれば、特段パワフルでない人にも有効になる技術です。

この記事では、スクワットポジションの特性やメリット、必要な可動性を獲得する為の運動を解説してます。


スクワットポジションのメリット&デメリット

スクワットポジションは主に仰向けのガード(クローズドガード、オープンガードなど)に用います。

ブレない

大きなメリットは三つ

  1. 重心の低さ

  2. 左右の安定性

  3. 腰痛になりにくい(最推し)

です。

中腰ぐらいでパスを仕掛けると、動くときに重心の位置が上下にブレます。重心が下がるタイミングでは脚が浮きやすくなる(抜重)ので、スイープされるリスクが出てきます。

一度、スクワットでしゃがみきることで、重心は下がります。そこからは上下に大きくブレずスイープの隙を与えません。反面、機動力が落ちるのがデメリットです。

ゆえに、いざ攻めるときは踵を浮かす必要があります。これはフォブリシオ・アンドレイが動画で説明してました。

脚を左右に開くことで、横のプレッシャーに対してのベースができます。スクワットポジションで左右にバランスを崩すことはほぼありません。

しかし、前もしくは後ろに押せば、簡単に倒れます。ただ、これは一人でしゃがんでる場合です。

柔術のように相手が前にいるならば、後ろに押されるプレッシャーに対しては、相手を引いて前に重心移動(踵を浮かす)することで簡単に防げます。上の動画でも実際にやってますね。

なので、弱点は前に引き倒されることになりますが、クローズドガードやオープンガードのように、背中を床についたガードでは難しいです。キックスパイダーで釣るとかシッティングで構えるのが対抗策になりえます。

↑マーシオ・アンドレのシッティングにスクワットしないファブリシオ・アンドレイ

マーシオ・アンドレはオープンガードスタイルですが、柔らかい上にスパイダーへも変化するのでたぶん天敵

シッティングには基本的にスクワットポジションをとるメリットは無いので、恐らく一番の難敵はキックスパイダー使いだと思います。

こういうの腰に厳しいよね・・・

中腰ぐらいのポスチャーだと機動力がありますが、襟を引かれて頭が下がるのを耐えるという柔術特有の負荷が腰にかかります。

このダメージの蓄積は腰痛につながりますが、スクワットポジションでは腰の負担も少なくなる上に襟グリップも切りやすくなります。

これらの特性を知っていれば、実戦で有効活用できると思います。


股関節の内転内旋

上述のように、柔術のスクワットポジションはトレーニングのスクワット以上の股関節の機能が求められます。

このスタイルを練習する前に欲しい機能としては

  1. 踵をついたフルスクワット

  2. しゃがんで左右への重心移動

  3. しゃがんで股関節の内外旋

あたりです。

通常、スクワット時の股関節は外転、外旋位(ようは外に開く)ですが、相手のラッソーやキックを防ぐタイミングでは、しゃがんだまま股関節を内転内旋させています。

動画の二つ目の動きができると良いです。

「キャッチャーみたいな動きを柔術でやるようになるとは思わんかったですわ」

股関節は屈曲伸展、内転外転、内旋外旋と様々な方向に動かせるのが理想的です。


感覚運動としての四股

最近、ラジオにて四股の説明をしました。

四股は筋トレとしてではなく、ソロドリルと同じように運動感覚(視覚、前庭覚、体性感覚)にアプローチする運動として取り入れるのが良いです。

エビやブリッジ、ジャカレのようの柔術に特異的なムーブではないですが、スクワットポジションから攻める選手にとっては特異的になるかもしれません。

四股は通常のスクワットよりも、ワイドスクワット、スモーデッドリフトに近いスタンスをとります。

これは股関節の外転と外旋です。

日常では股関節を外転、外旋位にすることはあまりないでしょうが、柔術では立技、パス、ガードと多くの局面で必要になります。

加えて、股関節の外転、外旋位で片足立ちになりバランスをとるのは難しく、意図せずこのポジションにされてスイープされてる人は少なくないと思います。

四股を踏むと、内転筋やハムストリングスが動的にストレッチされるのに加えて、頭の移動が入るので、視覚や前庭覚が刺激されバランス能力が改善が見込めます。

まずは10回だけでも、ブレないように踏んでみてください。


開脚の可動性と柔軟性

お尻が硬かったり、内転筋やハムストリングスがストレッチできないと上手くスクワットポジションがとれません。

もちろん四股も上手く踏めないので、姿勢だけとってストレッチするところから行うのをおすすめします。

力士が行うように、開脚のストレッチ(股割り)を行うのも悪くありませんが、ストレッチだけだと柔軟性は向上しても、そこに筋力とコントロールが伴わないので、怪我するリスクがあります。

相手を押す際、力士は左右に大きく足幅を開いてますが、その姿勢において両膝を開く必要があります。股関節の柔軟性が乏しければ、両膝を開いて腰を前に出すことができず、体幹と肘が離れてしまうのです。

世界初の相撲の技術の教科書より

力士が相手を押すとき、背中を丸めて、肘を腰に当てることで、脚で地面を押した力を前腕の骨を介して相手に伝える技術があります。要は腕の筋力で押さず、脚で押す。

股関節が硬くてしゃがめないと、この技が使えないので、力士は股割りをするらしいです。しかしながら、股割りが柔術に(一見良さそうに見えても)メリットがあるかは定かではありません。

可動性の獲得ということでは、四股やスモースタンスデッドリフト、ワイドスクワットなどを行い、柔らかさに加えて筋力も向上させていくことが推奨です。


まとめ

ここ数年で使う選手が増えた姿勢なので、私が若い頃にこのスタイルのパスを学ぶ機会はありませんでした。

自分に向いていたからなのか?キャリアにおいて中腰で腰を重くしてきたからなのか?

蹲踞からヘッドダウンも、アップライトも、一休みもできる非常に優れたスタイルに感じます。

ファブリシオ・アンドレイのようにアグレッシブに攻めることができなくても、姿勢さえとれれば、ドンっと構えて自分のペースで攻めれるので、一度は試してみてほしいと思います。

スクワットポジションからの攻め方↑

Yusuke Yamawaki

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