見出し画像

ガードが上手くなるコンディショニング方法(柔術家の為のコンディショニングノート①)

2023/7/17 モビリティドリルの動画ファイルをアップデートしました。

首や腰がクラッシュしてない?

この記事はベリンボロに必須である体を二つ折りにするムーブを完璧にするために行ってほしい日々のケアについてまとめています。

これらのコンディショニングを実践すれば、二つ折りでの怪我を防ぐのはもちろん、横回転が苦手な人は回りやすくなり、すでにベリンボロができてる人もワンランク上のパフォーマンスを発揮できるようになるはずです。

そして何より体を丸める能力が向上し、ガードワークが上手くなります。



序論

ブラジリアン柔術は数ある格闘技の中で、引き込み(ガード)から勝ちを狙える格闘技です。

唯一かどうかは定かでは無いですが、引き込みが許されるというのは特異な部分だと思います。

ダブルガードの攻防

2009年ごろでした、そんな独自性が突き進んだ結果、ベリンボロをはじめとするダブルガードの攻防が主に軽量級にて主流になりました。

当時、サミュエル・ブラガがベリンボロをつくったと言われてましたが、本当のところはわかりません。

後はハファ・メンデス、ATOS勢がレッグドラッグとのコンビネーションでガンガン実践投入して、ミヤオ兄弟がターボで回りに回り、いまや世界レベルの試合では標準装備みたいなものになりました。


ベリンボロの戦闘能力

ベリンボロを行うのに必須なのが体を二つ折りにするムーブです。

ミヤオ兄弟は薄いしお尻が遠かった

二つ折りになった時に

・脚が長い
・なるべく薄くなれる

この2つの要素が強いほど、お尻が相手から遠くなるので、カウンターされにくい良いベリンボロができます。

骨格はしょうがないとして、薄くなるための柔軟性は日々の努力で獲得できます。

ブラジリアン柔術にはベリンボロに限らず

・三角絞めを潰される
・スタックパス
・インバーティドでのディフェンス
・リバースデラヒーバの内回り
etc…

体を二つ折りにする(又はされる)シーンがあります。この時、適切な柔軟性がない為に怪我してしまうことはよくあるはずです。

どうしても柔術は技術に目がいきがちです。技は力の中にあり的な・・・筋力やパワーがあってこその技があるように、柔軟性があってこそできる技も多くあります。

1番は二つ折りで怪我をしないように、2番目はガードワークやベリンボロ、インバーティドのクオリティーをあげる為に日々のケアを実践してください。

体は十分に柔らかいけど上手く回れないって人は、こちらの動画を参考に練習してみてください。


良いベリンボロに必要な柔軟性

体を二つ折りにする(又はされる)ときに大事なのが

①脊柱の屈曲
②骨盤の後傾
③股関節の屈曲
④膝関節の伸展(マストではない)
⑤SBLの柔軟性

です。

柔軟性が足りず、これらの動きが制限されると、二つ折りが厳しくなります。その他、体幹部が太い(筋肉、脂肪)ことでできないなどもありますが、本稿では省きます。

※関節の柔らかさには、柔軟性と可動性があり、可動性がほしいところも含まれますが、便宜上すべて柔軟性とします。


脊柱の屈曲

簡単にいえば、背骨を丸めることです。

椎間板(黄色)はすり減ってしまう・・・

脊柱は頚椎から尾骨までの骨の連なりですが、26個の骨の間がそれぞれ関節であり、特に頚椎〜腰椎までの連動により背骨を大きく動かすことができます。

残念なことに年を重ねることで、脊柱の柔軟性は失われていきます。見た目どおり、体の軸そのものですから、脊柱が硬くなれば体が硬くなると言っても過言ではありません。

ベリンボロや二つ折りにおいて脊柱の屈曲が大事なのはもちろん、オープンガード、ハーフガードにかかわらずガードワークにおいて体を丸めることができないと簡単にパスされてしまいます。

ガードポジションにおいて、腹筋が弱くて脚が上がらないと感じたことがある人もいるかもしれませんが、それ以前に背骨が硬くて丸まれないということも考えられます。


骨盤の後傾

骨盤の前傾後傾、どちらが正解ということではないですが、適度に後傾できないと二つ折りのムーブは難しくなります。ガードにおいても脚が上がらないのでこれまた簡単にパスされます。

広背筋の走行(硬くなった広背筋は骨盤を前傾させる)

ブラジリアン柔術はエキサイティングかつ道衣を引く競技です。交感神経がビンビン優位になり背中が張りっぱなしなる人もいれば、広背筋が硬くなって骨盤を引っ張るような人もいます。セットで反り腰にもなるので体を丸める動作からは遠くなります。


股関節の屈曲

二つ折りはいわゆる前屈の姿勢です。下半身で可動域の制限をかけるのがハムストリングスです。

ハムストリングス(もも裏)の走行

股関節の伸展筋であるハムストリングス(以下ハム)が硬いままベリンボロ(二つ折り)を行うと、ハムが伸びない代償で脊柱が過剰に屈曲(冒頭のイラスト)します。これが腰や首の怪我につながります。

お尻の筋肉もハムと同じ股関節の伸展筋ですが、骨盤が後傾できているならば、お尻は緩むのでハムほどの制限因子にはなりません。

逆に骨盤が前傾していると、ハムが過剰に引っ張られる為に硬いと勘違いすることがあるので、ハムの柔軟性は骨盤の傾きとセットで考えます。


膝関節の伸展(マストではない)

体を二つ折りにした時に膝が伸びてるほど薄くなれます。ベリンボロにおいては腰が相手にとられにくくなりますし、インバーティドガードをつくってる時はパスの隙が小さくなります。

膝裏が硬いまま無理につま先を床につけると、代わりに腰が浮くのでバックを狙われやすくなります。

ハムストリングスや腓腹筋(ふくらはぎ)が硬いと膝の伸展を制限します。


SBLの柔軟性

体は複雑な層からなるファシアに包まれています。この内、筋肉を包むのが筋膜です。

筋肉はそれぞれ(上腕二頭筋、腹直筋、広背筋etc)に分かれていますが、同じ深さにある筋膜に包まれた筋肉どうしは連結しているという考え方があります。

SBL(ちゃんとしたのが見たければ検索して・・・)

主に体の背面の筋膜であるSBL(スーパーフィシャルバックライン)というものがあり

  • 趾骨底面

  • 足底筋膜、短趾屈筋

  • 踵骨

  • アキレス腱、腓腹筋

  • 大腿骨頭

  • ハムストリングス

  • 坐骨結節

  • 仙結節靱帯

  • 仙骨

  • 腰仙椎筋膜、脊柱起立筋

  • 後頭骨稜

  • 帽状腱膜

  • 前頭骨、眼窩上隆起

※職業上必要な場合をのぞいて特に覚えなくていいです。

足の裏の指ぐらいから体の背面を通り、頭のてっぺんを超えおでこまでつなげる長いテープみたいになっています。

二つ折りがうまくできない時は、上記の部位のどこかに問題がある可能性があります。筋膜連結では一つの部位に問題があると、同じラインにある他の部位も不調になったりします。

たとえば、歩きすぎて足の裏やふくらはぎが張ってる時には、ハムストリングスの硬さにも影響がでたりします。

逆にこのつながりを利用して、足の裏をほぐせばハムストリングスもほぐせます。

ここまでの理論をもとにコンディショニングを実践していけば、二つ折りになりやすい柔軟性が手に入り、回転動作も習得しやすくなります。

実践編は、私のおすすめする柔軟性獲得における効率の良いルーティンを並べています。柔術での無駄な怪我を防ぎ、ガード能力を向上させる土台を手に入れてください。

ここから先は

3,412字 / 25画像 / 1ファイル

¥ 300

いただいたサポートは柔術コミュニティのために使わせていただきます。