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二兎を追いかけられない
複数のことを、高いクオリティで同時進行させられるようになりたい。
いくつものことを、同じだけの情熱を持って取り組める人になりたい。
大学に入ってから、自分のエネルギーの方向が、一方向にしか向かない気がしていた。ずっと。
いまでも忘れられない、申し訳ないと思っている出来事がある。
大学生になって親元を離れたわたしは、アルバイトに明け暮れていた。コロナ禍がまだ始まったばかりで、部活に入部すらできず、時間を持て余していたのだ。
それに、とにかくお金が欲しかった。お小遣い制度がなかったわたしは、自由に使えるお金を手にしたかった。
何が欲しかったわけでもないけれど、孤独な時間を埋めたくて、それでお金がもらえるなら一石二鳥だからと、アルバイトばかりしていた。
そんなとき、わたしを気に入ってくれた人たちがいた。
でも、1人目も2人目も、わたしはその人たちに一生懸命になれなかった。特に1人目は、わたしは多分すきだったと思うけれど、駄目だった。
部活が始まってからは、やったことのない競技を1日も早くモノにするためにそちらに週の4日割き、残りをアルバイトに割いた。
2人とも自然消滅のようで、1人は留年し、もう1人もその後関わりがなくなったから、気まずくはないけど、やっぱりこれからも微かな胸の傷として残り続けると思う。
いろいろ、下手で未熟だったのだ。恋愛の仕方もわからず(正解はいまでもわからないけど)、周りのことばかり気にして、でも結局大事なのは自分だけで、自分がやりたいように過ごした。
いくつも両立できたら、もしかしたら彼らのうちの誰かと、いまでも仲良くやれていたかもしれない。
ここ一番という大事な試験前に、息抜きと言ってお祭りに出かける同級生たちのようになれたかもしれない。
もっともっと、いろんな楽しみを経験しながら、人生を謳歌できていたかもしれない。わたしの知らない世界を、たくさんわたしに、自然に染み込ませていけたかもしれない。
わたしの決断には、わたしが今までの人生で築いてきた価値観がある。
わたしはそれを無駄だとは思わないし、誇りに思ってこれからも生きていきたいけれど、人生を豊かに過ごせているのか、たまに不安になる。
エネルギーを、いろんな方向に向けていけたらいいのにな。たぶん、やれば出来るのだけど、それぞれにかける熱量は減ってしまう気がする。
でもわたしは、そんな自分をきっと認められない。中途半端が、きらいなのだ。
やっぱり、わたしはその時々のベストを自分で判断し、それに全力を注ぐことが自分の人生でやりたいことなんだな。
わたしが今やりたいことは、これだと確信しながら日々を過ごしていきたいのだ。
わたしはわたしの良さを信じてあげながら、明日もまた頑張ろうと思う。
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