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スポーツは上手い人が偉いのか?

 中学校年代のスポーツは本当に難しい!その理由は第二次成長期に入り、心と体の変化が大きくとても繊細な時期であるためです。周りの目が気になるし、いやでも自分と他人を比べてしまう、そして不安になってしまう。そんな時期なのです。そしてこの時期は人間関係も複雑になりやすい傾向にあります。

 実際私が中学校の時もいろいろとあり、年末はその話で盛りあがりました😄
 

 私は野球を辞めてバスケを始めた頃から1年経ち、中学に上がった頃、再び野球を再開しました。小学校時代の実績もあったので先輩達からものすごく期待され、鳴り物入りでの入部となりました。小学校の頃一緒に野球をやっていた同級生のメンバーも期待していたらしいです。私も自信に満ち溢れていて、上の学年ですぐにレギュラーを取ってやると意気込んでいました。

 しかし結論から言うと私は小学生の頃のように、上の学年の試合に出る事は一度もありませんでした。原因はいくつかありますが、最も大きかったのは1年以上のブランクでした。

長いブランクともともと深く考えてプレーするタイプでない私は、投球のメカニックを忘れてしまったのです。

その辺の詳しい話はまた次の機会に「体と頭とプレーの質」というかたちでお話しできたらと思います。

 なので今回の話は中学2年の頃から。
 先述したとおり私は上の学年で試合に出る事はありませんでしたが、上の学年は県大会で優勝するなど小学校の頃から継続している安定した強さでした。そんな世代の下である私達の世代は小学校の頃からそうですが、どうしても見劣りしてしまう世代でした。

 そんな学年の中で唯一輝きを放つ選手が、入学早々上の学年でレギュラーを掴んだF(仮名)でした。Fは小学校の頃、私がチームを辞めた後に「甲斐が辞めて監督に怒られる役が俺になった」と言っていた人物です。当時から同級生のなかではずば抜けて上手かったのですが、中学に上がるまでにさらに成長し、1学年上のチームでも常にレギュラーでした。Fは野球だけでなく運動全般得意で、陸上の大会に出て県大会優勝するほどのスーパーアスリートでした。

彼の凄いところはそれだけの能力があっっても満足しないところです。なんでも出来るが故に常に理想を高く持ち、どんどん高い水準のプレーを追求する。自分に対しても味方に対しても。
また少しヤンチャな一面も相まって、Fは学校全体で人気がありカリスマ的存在でした。周りのメンバーはFに常に期待し、Fもそれに常に答え続ける。そんな状態が私たちの世代のチームでした。上の学年と一緒に試合をしてきたFは今度は自分がチームを引っ張って勝たせる!という気持ちだったのでは無いかと思います。

 しかしそんな状況も徐々に変化していきます。Fの求めるプレー水準と周りのプレーに大きな差が出てきたのです。基本的にFはがピッチャーだったのですが、周りがエラーした時にチーム全体の空気が固まる様子が、当時のチーム状況を表していました。
チーム内で存在がズバ抜けすぎた為にFに対して誰も何も言えなくなってしまったのです。

 実際に当時を振り返って話すと皆が口を揃えて「あの頃のFは監督よりも怖かった。」「守備の時はボールが飛んできて欲しくなかった。」と言います。一方でFは「自分たちの世代になってどんどん野球が嫌になってた」と言っていました。

 そのような状況が続くと誰も野球を楽しめなくなり、3年生になる前にFは野球部をやめてしまいました。それがベストな選択肢であったかはわかりませんが、実際どうしようもなかったのではないか?というのが当時を振り返った皆の結論でした。なぜなら辞めることによってF自身が野球部から解放され、野球部もFの強すぎる影響力から解放されたのです。今考えると話合いで解決できたらそれが最も良い結果だったのかもしれませんが、当時はそれができませんでした😥

 スポーツが実力主義である以上「上手い=エライ」という図式は仕方ないのでしょうか?下手くそが何言ってるんだ!と言われたら大人しく引き下がりますか?
 そもそもそれが間違いではないかと私は思います。なぜなら「技術や運動能力」のフィジカル面と「戦術眼や分析力」のインテリジェンスの部分は必ずしも両立するとは限らないからです。

 だからこそ先入観を排除し、互いの個性や考え方を尊重し合うことはとても大切なことです。スポーツは答えが一つでないからこそ、色々な価値観を認め合う多様性の考え方が必要です。そしてその価値観は人格が形成される時期である小・中学校時代にスポーツで身につけるべき能力です。

 下手くそが何を言っても説得力がない。そう考える人は自分自身も相手に対しても可能性を狭める退屈な人間です。スポーツの楽しみ方を狭い範囲でしか知らない人なのです。スポーツは自分がプレーするだけでなく、支える、見る、語るといった様々な形で関わり楽しむことができます。

 上手くできないから自分に価値はない。そんな風に思う必要は無いのです。試合に出て活躍することや勝つことも大事ですが、それだけが選手の価値ではありません。
プレー以外でも自分の役割や責任、価値を見つけること。他人の価値を認められること。これこそジュニアスポーツの最大の魅力であり、最大のミッションであると私は思います。