雨の日には冷えたスプーンを

来月から新学期が始まります。ぽかぽか陽気の小春日和ですが、新境地に行く人にとっては、じんわり冷たい雨が心に広がることもあるのかなと思い書いてみました。春の雨は暖かいようでいて、指先をすぐに冷やしてしまう気の抜けないやつです。

 以前、ほんの少し苦手な人が言っていた言葉に「人間が唯一平等に持っているのは時間だ」というものがありました。だから、「時間を守れない人間は、馬以下だ」と。私は、ほんの少し…いや苦手だったので、「馬に失礼だわ」とひっそり心の中で毒づいていました笑

 と言うのも、海外で生活したことがあり、一概に時間を守れない人が全て馬以下だとは思わなかったからです。人には長所と短所があり、お互いにそれを補強しあいながら生きていくものだと思います。確かに、時間を守れない人=ルーズな人と考えられがちですが、ルーズな人にも良いところはあるのです。例えば、時間をあまり守らない人は、おおらかな人が多いように思えます。

 バスや電車が遅れてもそんなにイライラすることはない。どしっと構えて、相手の返事を待つ。催促をあまりしない。何事も心配しすぎない、楽観的な感覚の持ち主が多いように感じました。もしかすると生活していたところの土地柄や文化も関係してくるように思えますが、ふっと息抜きを自然とさせてくれるような人が多かったです。

 短いような長いような間、海外で生活し、今では、2時間まではイライラせずに人を待つことができるようになりました。(ただし単行本があるに限ります)むしろ、遅れてきた時に、きっと相手はひどく反省してくるのだから、遅れた時間分を楽しむように心がけるようになりました。なので、怒ったりせずに、次はほんの少しだけ早く来てね、といった具合に言葉を選んでいます。(集団生活で遅れて来る人がいれば、その人には15分早めに伝えるようにしています笑)

 時間を刻むものに時計があります。腕時計や置時計、デジタル式からアナログ式まで沢山あります。最近だと、携帯ですぐに確認できるので持っていない人も多いのかもしれません。たまに、就職祝いや入学祝いで買ってもらったのかなと、いい意味で不釣り合いな時計をしている人を見ると、なんだかほっこりします。その贈ってもらった時計に似合うような自分になれるように傷ついて、修復して、いい味をだしていくんだろうなと。「時計似合ってきたね」と言われた日が、きっとその人にとってのご褒美なのかなと思います。

 時計は、表面から見れば、時刻を示す針と天板しか見えません。ですが時を刻む為に、あの天板の下には数十個という部品が埋め込まれており、どれか一つ欠けてしまったら動かない作りになっているそうです。小さいものでは、1ミリ程度のパーツもあるんだとか。

 新学期や新生活に向けて、ちゃんと仕事できるかなとか上手く馴染めるかなとか思っている人がいると思います。でも、どんなに小さいことでもなくてはならない存在で、いらない無駄なものなどこの世には何一つないと思います。時計を支える小さな部品の様に、表面的には見えていなくても、私たちのひとつひとつのアクションは誰かの役に立っている、そう思います。社会の歯車というと強制的に働かされているように感じますが、社会の時計を刻む一部だと思えば、どんな小さいことでも自発的に動いているように感じませんか。平等な時間を作り出している時計は、色々な色形姿匂いをした私たちで出来ているのだと思います。

FIN

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