ハルの花の思い出

花。ハルの花の思い出。優しい色をした、色とりどりの花が心の中でひとつひとつ咲いていく。

読みかけの本、温かいミルクティ、お気に入りのイヤホンから流れてくる大好きな歌声。昔使っていたiPhoneを充電しながら、月が見える窓辺で少しウトウトする。閉じた瞼の裏側に沢山の花が咲く。桜の花や、抱えた花束、大きな笑い声。大好きな歌声に誘われて、普段よりも色鮮やかに思い浮かぶ私の中のハルの花たち。カラフルな花火とその煙、アイスを買いに向かう夜のコンビニの明るさ、ビールのグラスを合わせる音。貸してくれた緑のジャケット、買ってくれたお守り、一緒に作ったプレゼン用のスライドのデザイン。雪の日の留守番、夜中の電話、応援の手紙。柔らかくハルを歌う歌声の温かさは、温かい記憶全てに繋がり広げてくれる。

ハルの花。声に出してみる。春はもちろん季節の春。でも同時に最盛期というか一番良い時期を比喩的に表すこともある。花は植物の花。それと同時に華やかできらびやかな、ある物事を象徴する状態を指すこともある。

だからかしら。ハルの花、を聴いていると気持ちがどんどん温まって、自分の中に閉まってある大切なものが熱を持って存在感が増してくる。私の中のハルの花。それはもちろん、彼と過ごしたあの約2年半の日々のこと。

久しぶりに充電された古いiPhoneのカメラロールをそっと開く。記憶通りに鮮明なたくさんの写真を眺めながら、音楽に合わせハルの花を自分でも歌ってみる。ふと横を向くと、窓に映った柔らかく微笑む自分と目が合った。

♬もしも突然の静かさで 不安と孤独に沈んでいく夜は この声が枯れ尽きても 遠く離れても届くように

ハルの花 / 松尾太陽


個人的に、世界一やさしくて温かい歌だと思っているハルの花に寄せて。歌詞もメロディも、そしてなによりもその歌声に何度救われてきて。これからもこの曲があれば大丈夫だと静かで穏やかな気持ちになる。広々と優しくて頼もしい、松尾太陽さんそのものみたいな素敵な音楽に感謝の気持ちを込めて。

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