恋と21g

僕の恋はいつも夏の日のビル風みたいで友達とキスだってなんだってできた、だってみんな大好きでおままごとみたいな関係が心地良くて、境界線を決めたくて何回だってひこうと思ったけどきっとこの"ごちゃごちゃ"が僕の宝箱の中身だった。でも君だけは違っていてああ恋だこの最悪で醜い、世界で君だけが大好きで、世界を嫌いになってしまうようなあたたかいこの気持ちがきっと。あの場所あの瞬間僕は確かに君と目が合って、みんなに笑われちゃうような恋をしたんだ、何それ変なの、ウケるって、どうだっていいよふたりぼっちのあの日差しだけが僕の目をつかまえた。

僕と君の境界線ははっきり分かれていて。ヤんなっちゃうねあーあ君とあの日見た世界地図を思い出す。君は国の場所が分からない僕を笑っていたっけ、少しむくれたけど僕もいつの間にか口角が上がっていて、ねえあの瞬間だけは僕たち、きっと、どこかでひとつになっていたのかな。

僕は君と曖昧でいたいんだよずうっと、混ざりあって、春の夜明けの雲みたいに、ぼくらふたりで綺麗でいようよこんな世界だけどさ。ぼくたちの関係を枠になんてはめたくなかったんだ、名前は生まれてから死ぬまでを指すこともいつか僕らが収まった写真立ての横に白い祝福の写真があることも全部嫌だったから。曖昧でいたかったんだよ始まらなくていい写真になんて残されなくていいただ僕ら息遣いを感じていたかった。


君の話す言葉が好きだ。書く言葉が好きだ。君の文章は世界を知っていた、すべての意味を掴んでいたから。ねえ僕の生きてる意味は知ってる?迷いながら開きかけた口を成形しなおして、君の文章が好きだよって、そう伝えた。照れた顔が愛おしくて自分の生きる意味も見つかった気がしたんだ馬鹿だよね、君の世界だって僕の価値は測ってくれないのに。
21g。大さじ1杯より少し重い。君の世界はきっと17gの感情と4gのニヒルで出来ていて、同じだけの感情と弱さを持った僕は、だから君が好きだ。君のニヒルは僕の弱さよりも質量があって、だから君の世界はいつも僕を君の横に繋ぎ止めている。
僕、君が好きだよ、ずっと。2月14日、僕はお酒が弱い君に渡すためのマロングラッセに21ccだけ、ラム酒を放り込んだ。

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