歌詞勉強 Love is on line キリンジ


今回はキリンジの Love is on line について。

キリンジの6枚目のアルバム『DODECAGON』の11曲目。しっとりと夜に聞きたいバラードになります。
テーマはネット恋愛。 キリンジならではの言葉選びと、歌い方も含め感情を揺らしてくる名曲です。

さっそく勉強していきましょう。

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「キリンは立って寝る
鳥は枝で寝る
ヒトだけが眠れない夜は長く
君は女ですか
女の振りかな
すれ違ったなら振り向いてね」


こんな歌詞から始まる曲はなかなかありません。キリンも鳥も、多くの生き物たちが寝静まる夜を描写しています。
ヒトは生物学上の表記として、ですね。寝不足というものが他の動物にあるのかはわかりませんが、寝れないというのは人間らしさなのかもしれません。そんななか主人公は寝れない夜をインターネットで過ごしています。

「君は女ですか 女の振りかな」と相手との関係が書かれています。相手とは直接顔を見合わせたことがなく、相手の中身が女性なのか、それとも女性の振りをした男性、いわゆるネカマなのか分かっていません。 
ただもし、街であなたが自分のことに気が付いたら、振り向いて欲しいと歌ってます。


この楽曲は一音にひとつ。音がはめられており、言葉をとても大事に扱っているように感じます。最近の曲は音に言葉を詰め込むことが主流というか、多くなっています。歌謡っぽさやバラードなどの場合は1つの音に1つの言葉を入れることが多いですので、モチーフやイメージなどによって変えるといいでしょう。
また、この楽曲全体で使われているセリフ口調は、主観的な映像を想像しやすくなる効果があるように思います。
使う時は”~だろう”、”~しよう”、”~ね”、”~だよ” など。主観の主に当てはまる口調で統一しましょう。
例えば、女性視点の歌詞で、”~だわ”を使っているとき、”~だろ”という口調は少し乱暴で、合わないように思います。

使うのなら"~でしょ" などが合うでしょう。
特にキャラクターソングやアイドルソングなどは世界観やキャライメージに直結しますので、考えて制作しましょう。また、歌い手や主観の人物に合わせた口調を活用しましょう。



「鼻緒が切れたら叫ぶんだよ
僕の袖を千切って
結べばいいだろう」


Bメロ。鼻緒とは、下駄や草履についている、足にかけるひものことです。
自分にとっていかに相手が大切なのかが分かります。
とても詩的なセリフですが、相手が誰か分からないからこそ、言えるのかもしれません。
1回し目のBメロは全体的に、相手のことを大事に思っていることをちょっと遠回しに歌っています。


「Love is on line, love is on line
光る朝の訪れを待とう
Love is on line, love is on line
二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ」


サビです。蜘蛛の糸、これはネット=インターネットのことを指しています。世界中に広がる情報網が蜘蛛の巣に見えるという理由で
www(ワールドワイドウェブ)という名前が付けられたそうですので、的確な表現ですね。
その蜘蛛の糸から糸へと移動する夜露を、ネットを使ってつながる"自分と相手"そのもの、もしくは"交わす言葉"に当てはめています。
夜から朝へと変わる中、朝日に照らされてキラキラと輝きたい というのが儚さの中にある希望を感じるように思います。

「love is on line」ですが、直訳すると"愛は線の上"です。ネットの糸の上で自分の愛はあなたとつながっている 
ということだと思います。onlineと繋げて読むと、愛は接続されている と訳せます。こっちも意味としては通ってますね。

「光る朝の訪れを待とう」 という部分はとても期待感が膨らむ言葉です。2人の間に希望が見える、そんな表現です。
夜と朝という時間帯によって、その場のイメージを抱かせることができます。
朝…希望、晴れやか、明るいイメージ
夜…苦しみ、悲しみ、苦労、耐える、暗いイメージ 
です。勿論、前や後ろに言葉を足すことで、逆のイメージにすることもできます。
2人の夜 なら暗くてもいいイメージになりますし、今日も同じ朝 なら退屈だというのが想像できます。
夜明け、朝焼け、夕焼け、星、月など時間や空の状況を描くだけで、心情を伝える一つの手段にもなります。
また、Aメロで夜→Bメロで夜明け→サビで朝 に場面を移動させるなども一つの手法ですね。



ここまでで、直接的にネットやらパソコンやらの言葉は出てきていません。
それでも分かることができるのは、「君は女ですか 女の振りかな」、そして「love is on line」
この2か所の言葉選びのおかげです。「君は女ですか 女の振りかな」だけでは女装のように想像できますが、そのあとに続く
「すれ違ったなら」 という部分で、会ったことがないのだと解釈できます。



「新聞配達が廊下を走り抜けた
指先から伝わる愛を」


ここで深夜から、だんだん朝が近づいてきました。
指先から~ の部分はキーボードなどで文字を打っている場面を表現しています。曲的には1回し目のAメロの半分になっています。新聞配達というワードによって、明け方近いのだというのが分かりますね。


「感じてるんだ
フォントが滲む
あやとりをするように
睦みあうのなら」


Bメロです。
滲む とは液体が周囲に広がっていくこと という意味を持ちます。2回し目のAから言葉が繋がっていますので、
フォントが滲むとは、フォントを通して愛が胸に染みていくということだと解釈しました。
また、ニコニコの動画で、"フォント"と"ホント"を掛けている ということがコメントで書かれていました。
面白い考えだと思います。ダブルミーニングとして考えても、意味に違和感ありませんし、語感的には同じですしね。


「あやとりをするように睦み合うのなら」は交し合う言葉が重なっていことをあやとりにみたてた直喩表現だと解釈しました。
睦合うには仲良しなさまという意味があります。


「Love is on line, love is on line
心はもう通いあってる
Love is on line, love is on line
二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ」


2回目のサビ。タイトルであり、重要な部分であるフレーズは変えず、1行だけを変えています。
これはよく使われる手法です。タイトルや重要フレーズは変えず、それ以外を変えることで違いを生みだすことができます。
「心はもう通いあってる」 意味としては心はネットの上でも通い合えている。次は会ってリアルに繋がりたい
(深い意味はない)ということだと思います。


言葉の泡を掻き分けてゆく
僕は何を探しているのだろう

君ひとりにめぐり逢いたいのさ


Dメロです。言葉の泡についてですが、恐らくメロディとの兼ね合いの中で2文字の単語の中から、イメージに一番合うものを
選んだ結果なのだと思います。泡にした理由は、書いては消えるネット上のコメントが泡のようだ という理由だと解釈しました。ほかの選出候補としては、"なかを"とかになるでしょうか。ここは言葉選びのセンスが問われますね。


数え切れないほどの言葉を交わす中、僕は本当の君を探しています。
広がるネットの海でたったひとりに合いたいと強く願っています。

間を開けたのは上の2行と下の1行が展開的にも分けられていると思ったからです。DとD'と表記してもいいかもしれません。
このD’がこの曲の歌詞の中で、結構重要な部分だと思っています。というより伝えたいこと と言った方がいいかもしれません。
タイトルとこの部分の2つが、この歌詞のキーなのだと思います。

「渡る夜露さー」と「めぐり逢いたいのさー」とファルセットをする箇所は両方とも
口を開ける音をはめることで、歌いやすくなっています。


Love is on line, love is on line
心はもう通いあってる 
Love is on line, love is on line
二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ
Love is on line, love is on line
君は僕を見つけられるかな
Love is on line, love is on line
二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ


そしてラスサビ。
基本的に繰り返しですので、説明は上記をご覧ください。
上との違いは一か所だけ。「君は僕を見つけられるかな」 と、相手に見つけてほしいんだ という願いを描いています。
ちょっと茶化すような表現とも受け取れますね。 僕は君を見つけられるけど、君はどうかな? 的な。
まあ恐らくは普通に、君は僕を見つけてくれるのかな? ということだとは思います。


というわけで、ざーっと思いつくままに書きましたが、いかがだったでしょうか。ちょっとでも考察や作詞の勉強の参考になればと思います。

それにしてもキリンジの曲はどれも魅力的だなーとあらためて思います。ちょっと前からエイリアンズがcmやTVで使われたり、紹介されたりして、いろいろな人がカバーしたりしているのを見て、勝手にうれしくなっています。

あまり聞いたことがない、どれ聞けばいいか分からない人には「エイリアンズ」や「朝焼けは雨の兆し」、Negiccoの「愛は光」が聞きやすいかなーと思っております。聞いたことがない人はぜひ。

以上、雑な文になったかとは思いますが、読んでいただきありがとうございました。また書いた文をちょこちょこ修正していきますので、温かい目で見てくださると幸いです。


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