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「圧倒的気遣い力と人間力のプロヒモと出会う」

2020年4月某日

スマホのGoogleホーム画面に表示されていた、1本の記事を何気なく開いた。

日刊SPA!の赤いロゴと、振り向きざまにこちらを見やる男性。
そして、ちょっとびっくりな、このタイトル。

“プロのヒモが伝授する、彼女が何を食べたいかLINEで察する技術”

プロのヒモ?
彼女が何を食べたいかLINEで察する技術?

なにやら面白い予感。

なにはともあれ、ひとまず読んでみることにした。

***

キャプチャ

澄み渡る青空と白い雲
https://nikkan-spa.jp/1654618


この、振り向きざまにこちらを見やる男性は、名前を「ふみくん」といい生業はなんと「ヒモ」だという。
なんでも、大学在学中から10年超、10人の女性の家に居候をし、家賃を1000万以上浮かせているどころか、(それだけでも凄いのに)身に着ける衣服、お仕事用のMacBookAirにいたるまで、身の回りの物の大半が女性からプレゼントされたものだそう。



ここだけを聞けば読者の皆さまの頭には、
「は?」(イラッ)
もしくは
「ん?」(???)の文字が浮かぶことだろう。



それは、おそらく皆さまのなかで、

【ヒモ】女を働かせて金銭をみつがせている情夫。(広辞苑より)


という、いわゆる女性を経済的に縛り、貢がせ、もらったお金は速攻でギャンブルへ投入・全て使い果たしたあげく、次のギャンブル代を何食わぬ顔で要求する…といった底なし沼へどっぷりハマりこませるイケメンダメンズの印象が強いから。

かくいう私もはじめに思い浮かんだのは“だめんず・うぉ~か~”である。

だめ

※藤原紀香主演でドラマ化もされた倉田真由美先生の大人気コミックエッセイ。ヒモをはじめ数々の“だめんず“が登場する。


「ふみくん」も、プロフィールだけを見れば完全に女性のお金を頼りに生活する立派な“ヒモ“なのだが、どうやら、そんな単純な話ではなさそうだ。記事を読み進めていくうちに、このプロヒモ「ふみくん」には別の顔があることに気づく。

“毎日、彼女のリクエストするご飯を朝昼晩と作っている“
“自作のリクエストボードを家に置く
(今日の気分は~~~~~~が食べたい!!というセリフとともに、雪国風の
女の子のイラストが描かれている)”
“昼休みの時間帯にLINEでそれとなく今夜何が食べたいかを聞く”


どうやら、「ふみくん」は毎日彼女のご飯を作っていて、なおかつ毎食リクエストにこたえたメニューを出しているらしい。


ちなみに、この日の夕食リクエストは

「うーん、和風?」

とのことだったようだ。


和風。和風料理で私が真っ先に思い浮かぶのは肉じゃがと味噌汁である。

じゃが

しかし、10年超、10人の女性の家に居候をし、家賃を1000万以上浮かせているプロヒモ「ふみくん」的には、肉じゃが回答は×らしい。

「ふみくん」がこの記事の中で出している解(ちなみに、このことを「ふみくん」は「正解メシ」と呼んでいる)は、

ポン酢などを使ったサッパリ味の和風料理かつ魚料理


である。

ポン酢なのは、和風というところから何となく分からなくもないが、ではなぜ肉ではなく魚料理と断言できるのか?

10年超、10人の女性の家に居候をし、家賃を1000万以上浮かせているプロヒモ「ふみくん」いわく、

・肉料理はカロリーが多いから
・仮に『和風の肉メニュー』が良いのであれば『肉じゃが』『和風ハンバーグ』など、そのものズバリが飛んでくるはずだから

なるほど。『肉じゃが』が食べたいときはたしかに『肉じゃが』というかもしれない。
肉を使わない和風料理とするならば、味付けも確かに醤油や味噌ではなく
サッパリポン酢の可能性もあるのかもしれない。

「ヒモ」という前知識のせいでなぜか私の中での何かのハードルが下がっており、少しだけ(お?)と心が動くのを感じたが、これだけでは感心するにはまだ早い。まだまだ“プロのヒモ“というパワーワードの印象も残る。

そう思い、続きを読み進めていく。


記事には、次に、「うーん、麺類?」というLINEの場合にはどうするのか。という麺類パターンの解の出し方も書いてある。


この場合には、『トマト系のパスタ』が「正解メシ」となるそうだ。


なぜなら、

・『うどん』『そば』が食べたいのであれば、『食欲が無い』『体調が悪いから』などの前置きがある。この場合にはそれがないので食欲はある上で
麺類が食べたい、ということ
・家庭料理にラーメンを期待することは少ない
・焼うどんなどのトリッキーな線も薄い

から。

一応彼女にトマトでよいか、の確認もとるが、それでもうどん・そば・かた焼きそば・ラーメン・刀削麺・ほうとう・ペンネ・ジャージャー麵などの数多くの種類がある麺類からピタリとパスタを当ててくる技術と、想像力は、さすが10年超、10人の女性の家に居候をし、家賃を1000万以上浮かせているプロヒモである。



和風の話も麺類の話も言われてみれば「確かに、そうだよね」と思うことかもしれない。だからといって、同じ推察が自分にも出来るとは限らない。
むしろたぶん、出来ないのではないか。


和風のリクエストが来たら真っ先に自分が思い浮かぶ『肉じゃが』を作ろうとするかもしれないし、麺類と言われたら自分の好きでかつ茹でるだけの『そば』を選択するかもしれない。
それか、手っ取り早く追加の質問を仕事中の相手に投げかけてしまうかもしれない。
「うーん、洋風?」なんてリクエストがきたら、もうワールドワイドすぎて手に負えない。

「ふみくん」が、仮に惰性で夕飯づくりをやっていれば、いちいち少ないヒントから想像力を働かせる、なんていう大変な作業は、「しよう」とも思わないだろう。


(そうすると…これは、なかなか凄いことなのでは…)と、じわじわと、
静かな興奮が沸き上がってくるのを感じた。


記事は終盤に差し掛かっていた。次のページを開く。


遅めの時間の夕食でご飯の進むおかずはNG

・今回のリクエストでも、帰宅時間が20時という情報を予め入手しており、この帰宅時間も晩ごはんメニューを決定する上での重要な勘案ポイントと
なる。
・20時以降のガッツリとした晩ごはんは睡眠時にカロリーとして蓄積され、太りやすくなる。だからこそ白ごはんの進みすぎるメニューはNG。
そこで、「炭水化物の接種を抑えられる副菜」としておなかの膨らむ汁物を必ず用意する。水分の豊富な野菜サラダも鉄板。

確かに、炭水化物は夜には控えめにするのがダイエット界では割と常識である。『肉じゃが』ではご飯が進んでしまう。
特にカロリーを気にする女性としては、このような心づかいはとてもうれしい。

こうして、「うーん、和風?」のリクエストは、断片的に散らばる手がかりから推理され、このような「正解メシ」となった。

ほっけ

サラダに魚に豆腐の味噌汁に、非の打ち所がないヘルシーメニュー。


凄い。「ふみくん」にたった一言、「うーん、和風?」とリクエストをしておけば、ここまでの献立を用意してくれるだなんて…。

ただただ感激しきりであった。



ここで、もしかすると皆様は、「ふみくん」はヒモなのだから、家賃を払ってくれている彼女のリクエストに応じるくらいやってもいいのでは、とも思うかもしれない。

だが、冒頭に共有した“ヒモ“のイメージを思い出してほしい。

【ヒモ】女を働かせて金銭をみつがせている情夫。(広辞苑より)
という、いわゆる女性を経済的に縛り、貢がせ、もらったお金は速攻でギャンブルへ投入・全て使い果たしたあげく、次のギャンブル代を何食わぬ顔で要求する…といった底なし沼へどっぷりハマりこませるイケメンダメンズ


である。あれ、なんか全然ちがう。全然ダメンズ感がない。
真心を感じて、むしろ、なぜか、好印象。


それに、仕事から疲れて帰ってきてこんなに自分のことを考えて作ってくれた豪華な手作りメニューが毎日食卓に並んでいたら、普通に、凄く嬉しくなかろうか。


私、そして皆さまの持つアブナいヒモのイメージは、プロのヒモ「ふみくん」の前ではやすやすと打ち砕かれてしまった(はず)のである。

・女性を金づるにしてダークサイドに引きずり込ませるヒモではない
・仕事もしていないし家にもずっと居るのに家事もしない、本当になにもしない“ないないづくし”のヒモでもない
・むしろ家事をしているのでヒモではない疑惑

3つ目の黒ポチの疑惑の通り、ふみくんはご自分で「プロのヒモ」を名乗ってはいるが、事実の上では専業主夫なのかもしれない。
そう考えれば、家事をして、ご飯を作って、せっかく作るなら彼女が喜ぶメニューにする、というのもまあ家事分担の上でのお仕事の一つとして考えれば、特別びっくりすることではない…?


だが。


私は思った。


ふみくんが「ヒモ」か否かにかかわらず、「専業主夫」であろうとなかろうと、365日朝昼(お弁当)晩とご飯を作るなかで、毎食相手の意を汲んだ
メニューを作っている
ということは、それでもやはり、かなり凄いことなのではないだろうか。

当然彼女からのリクエストは本当に多種多様なものだろう。
食べたいものが思い浮かばず「なんでもいい」がリクエストの日もあるはずだ。
しかし、そんな時でもこのプロヒモ「ふみくん」はLINEの短いメッセージをはじめ、前日の食事メニュー、帰宅時間といった斟酌しうるすべての事柄を総合して比較衡量し、たった一つの「正解メシ」を毎日導き出しているのである。


ご飯づくりや毎日することに限らず、頭をひねり工夫を凝らし相手の顔を想像しながら気遣って何かをするのは難しいことだ。
言われなくても分かっている!ということだとは思うが、それでもやっぱり難しい。


出来ているつもりで出来ていない。やっているようでやっていない。
よかれとおもってやったが相手的にはNGであった。


こういう微妙な揺れで、あわや惨事にもなりかねない世の中で、プロのヒモ「ふみくん」は365日「正解メシ」を彼女のために作り続けているのである。


この際「プロヒモであること」や「プロヒモってなんだ」とかそういうことは一旦脇に置いておいて、私はこの記事から「ふみくん」の気遣い力と人間力をひしひしと感じた。

そして、「ぜひ直接お話を伺いたい!」「本にしたら絶対面白い!」と思ったので、さっそく「ふみくん」に連絡してみることにした。


***

結局「ふみくん」はプロヒモなの?それとも専業主夫なの?
プロヒモと専業主夫は、何が違うの?という素朴な疑問。(他にももちろんたくさん疑問はありますが)

それは、のちのち「ふみくん」と対峙する中で語られていくことになります!

プロヒモと専業主夫の違いが気になる方、プロヒモ「ふみくん」の正体を知りたい方はぜひぜひ続きを読んでいただければ幸いです!!

ちなみに、「ふみくん」に正解メシの正答率をお伺いしたところ、100%ということでした。
これまでこの正解メシの解法を使って彼女から不満が出たことは一度もないそうです。
365日3食のご飯で正答率100%は驚異的な数字。さすが相手の意を汲み取る技術に尋常でないレベルで長けたプロヒモ。


次回は『プロヒモ「ふみくん」と初の電話会議!プロのヒモのぶっ飛び恋愛観や人生観!』をお話しします!


最後までお読みいただきありがとうございます! 面白かった、共感した、びっくりした、などなどありましたらぜひスキ、コメントもいただけるとうれしいです!!