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ラーメン部骨伝導 毎週ショートショートnote

それはまるで夢のようだった。こんな話、誰が信じてくれるだろう。
まだ私がラーメン部に席を置いていた時だから二十年も前の話だ。

あんなに旨いラーメンは後にも先にも食べた事はない。もうあの味に二度と会える事は無い。
店主はレシピを誰にも伝えることなく旅立った。
そのラーメンは一人で食べても意味はない。
必ず複数の、4、5人もいれば良いが、人がくっついて座る。骨盤から骨盤に、骨から骨に旨さが伝わる真骨頂の味わい方。
4人いれば4倍に、5人いれば5倍に旨さが増幅するのだ。

我々ラーメン部のメンバーで、その店に食べに行った、何度も何度も。
だが、他の客からそんな話は聞いた事はなかった。
我々だけに、店主が何かを施したのだろうか。もう一度だけでも、あのラーメンが食べたい。
だが、あの味を知ってから、私達は他のラーメンが不味くて食べられなくなってしまった。
だから、ラーメン部のメンバーは思い出の中のラーメンを味わっている。
勿論、骨を寄せ合って。

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たらはかにさんの企画です。
今日は何だか、身体中の骨が騒いでいる気がするような、しないような。


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