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あるべき成仏宴 毎週ショートショートnote

私は彼の家の前に佇む。彼の顔を一目見たかっただけ。
そして、彼が家から出てきた。綺麗な女の子を連れて。朝の7時。私がいなくても平気なんだ。

その時、黒猫に出会った。
猫の後ろ脚は左右とも白の靴下を履いていているようで。他の部分はすべて黒い。そして背中には真っ白な羽。悪魔の化身?それとも天使?

私は怖がるべきか、面白がるべきか迷った。まあ、面白がるべきだよね。
何があっても私はもう二度と死ぬことなど無いのだから。

私は早速、猫に声をかけようとしたが、猫の方が先に私に声をかけてきた。
「君、花野葉子だよね?」
確かに私の生前の名前だ。
「そうよ」
「君を探しに来たんだよ。せっかく天国に行ける沙汰が出たのに何で逃亡したの?って、わかってるよ。想いをここに残してたんだね」

「想いは回収済。サッパリしたわ。本当にごめんなさい」
「さあ、ボクに乗って。天国で歓迎会さ。皆んな君を待ってるんだ。
時間厳守であるべき成仏宴に遅刻したのは君が初めてだよ」

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たらはかにさんの裏お題『あるべき成仏宴』です。
私がもし天国に行けるなら。後ろ足に白い靴下、背中に白い羽の黒猫さんに連れて行ってもらいたいですが、無理かな。


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