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ベランダの酒
ある日から私の部屋のベランダに酒が置かれるようになった。もう半年になる。
日本酒一合が、どこにでもあるような安物のガラスのコップに入っている。
私の部屋は10階建ての8階。両隣からも階下からも上の階からも、このコップをこの場所に置くのは不可能。
酒はありがたく頂いている。最高級の日本酒。気味は悪いが美味いものは美味い。無類の日本酒好きだもので。
毒?この酒の芳醇な香りを嗅いだ時、死んでも良いと喉が鳴ったさ。空のコップはまた元の場所に置いておく。しばらくすると消えている。不思議だが酒の届く日が待ち遠しい。
例えば誰かにネットなんかに投稿されたりすると酒が呑めなくなるのは困る。秘密にしている。
ある場所である女がある建物の中に入って行った。彼女はいつもの場所に行き、誰とも知れぬものに向かって話しかける。
「あなた、私再婚するから、もうここには来れない。ごめんなさい。許して」
そう言うと、8段目の一角に最後となるコップ酒を供えた。
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チョイスしたワードは『ベランダ』と『酒』です。
爪毛さん、今年一年お世話になりました。ありがとうございます。難しいと思いながらも楽しませて頂きました。
爪毛様、皆様、来る年が良い年でありますように。来年もどうぞよろしくお願い致します。めい
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