新鮮な霊と旅の霊
60になった時、ふと思った。
世界一周の旅をしてみたいと。
世界一周どころか、日本から出た事も無いのだ。
必ず実現させよう。
そう思ったのに、あっという間に時は過ぎた。
70になった時、ふと思った。
日本一周の旅をしてみたいと。
日本一周どころか、生まれた県から出た事も無いのだ。
必ず実現させよう。
そう思ったのに、あっという間に時は過ぎた。
80になった時、私は死の床にあった。
ああ、何とつまらない人生だ…。
涙が溢れた時、私は終わった。
私は立ち上がった。姿は変わった。
生まれたばかりの新鮮な霊。
体は軽いし浮く事もできる。嬉しい。
今の私はどこでも好きな場所に行ける。浮き上がりクルクル回ってみた。
その時、傍に誰かがいるのに気づいた。
「死神?」
「君はもう死んでいるよ」
「私は生前旅が好きで、あらゆる国を訪れた。まだまだ行きたい。で、君を誘いに来た。一緒に旅をしよう。案内するよ」
私は返事の代わりに、彼の、旅の霊の指にそっと指を絡ませた。
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霊魂旅行とでもいうのでしょうか。
ちょっと、羨ましい気も。