つまみ癖
「ちょっとー、やめてよー」
妻の声が響く。
「圭が真似するからいい加減にしてよ!」
「ハイハイ」と言いながらも夫は唐揚げをもう二つ摘む。
「揚げたてが一番美味い」
そう言いながら唐揚げの一つを圭に渡す。
呆れる妻を後目に、自分の部屋に逃げ込む夫。
やおら二人はそれぞれに携帯を取り出す。メールチェック。
お目当てのメールがあったらしく、二人の顔がそれぞれ緩む。
夫には秘密がある。妻が知ったらタダではすまない事は重々承知。それでも湧いてくる浮気心。
唐揚げのつまみ食いと同じレベルなのか、それ以上か。
その頃、妻は夫の知らない男と電話をしていた。
「会いたいの、私…」
彼女は、エプロンで目頭を抑えているが泣き真似なのだ。
息子の圭の姿はテーブルの上に。手掴みで唐揚げを頬張っている。母親を窺いながら。
それに気づき、彼女は素っ頓狂な声を出して電話を切った。
親子3人それぞれのつまみ癖を他人事と笑うなかれ。
つまみ癖は確か、あなたにもありましたよね。
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今回のワードチョイスは『つまみ』と『癖』です。
なんのオチもないですが、身に覚えのある方には少し響くかも😄