感想文部 毎週ショートショートnote
「コーヒーを飲みながら、お話ししませんか」大学で声をかけられた。
声の持ち主は、美しい学生。
新手の勧誘か詐欺もどきか。
その手の話なら断る自信もある。美しい女性とコーヒーを前にしている自分を想像し、彼女に同行する。
喫茶コーナーに入ると、彼女はコーヒーを注文した。
席に着き、彼女は話し出す。
「あなたがその本を持っておられたので声をかけました」
その本とは、私が小脇に抱えていた『誰がために鐘は鳴る』ヘミングウェイの著書。
「随分古い作品ですよね。八十年も昔に書かれた本ですもの」
「この本がどうかしましたか」
コーヒーがテーブルに置かれた。
「その本の感想文を書いて頂きたいの」
「えっ、昔から感想文は大の苦手です」私は動揺する。
「私、感想文部の者です」
「私に感想文を書かせてどうするんですか」
「感想文部は感想文の感想を論じる活動をしているのよ。ね、書いてくださるわよね、私のために」
「書きます、あなたのために」
カラクリ時計の鐘が鳴った。
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たらはかにさんの企画です。
主題がズレた気も。