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毎週ショートショートnote

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たらはかにさんの企画です。410文字ほどの世界。お題は毎週日曜日に出されます。
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2022年6月の記事一覧

涙鉛筆 毎週ショートショートnote

昭和のドラマを見ていたら、じいちゃんがテレビの前で仁王立ちした。 「じいちゃん、見えんよ」 「手動の鉛筆削り、懐かしいの。鉛筆の芯がよく折れて、すぐに鉛筆がチビて不経済じゃった」 そんな会話をしたからか、じいちゃんはその後、自室でなにやらゴソゴソしていた。 じいちゃんが戻って来て、 僕に鉛筆の入った箱を差し出した。 それは色鉛筆。それも淡いブルーばかり。しかも微妙に青の色が違う。 「これは、ばあちゃんと一本づつ買った。結婚した時、子供達が産まれた時と結婚した時、孫

★ショートショート王様2 毎週ショートショートnote

ショートショートを書いて、雑誌『王様』に掲載してもらっている。 まだ次回作が決まらない。 ところで、君は知ってるかな。 ショートショートガールの話。 聞いた話だが、大人になるまでに一度も女の子とデートした事の無い男が増えているそうだ。 一から擬似体験をしてみたいという需要があるそうなんだよ。 ウブな中学一年生的なデートをしてくれるそうだ。需要あれば供給ありだな。 デートは散歩的なものだ。だから店舗に入っての飲食、プレゼントはダメ。動物園、植物園、美術館などはOK。

ショートショート王様 毎週ショートショートnote

御伽噺の中の、ある国の王様の話です。 この王様、当時流行り始めたロボット作りに夢中なのです。 勿論、それなりの知識は必要なのですが。 なんでも、取り敢えずやってみるという事をモットーとしている王様でありました。 なので、ロボットが完成する事は無いと周りの者達は思っていましたが、ロボット作りに王様は明け暮れ、王様の仕事は大臣に丸投げする始末。 さすがにこれでは困ります。賢明な王妃は一計を講じました。 「ねえ、王様、どんなロボットができるのですか」 「わしとソックリなロ

動かないボーナス2 毎週ショートショートnote

「ねえママ、パパがボーナスもらったら、ぼくにもお小遣いのボーナスくれる?タカシ君ちも、メグちゃんちも、くれるんだって」 ハルト君はママの表情を窺っている。 タカシ君もメグちゃんも、夫の同僚の子だ。それが本当ならダメとは言いにくい。 「パパに聞いてみるわ、でも期待しないでね」 ハルト君は心配そうに頷いた。 次の日、ハルト君、タカシ君、メグちゃんの三人はひそひそ話。 「絶対成功するよ」「どうかなあ」「心配だなあ」 どうやら三人が申し合わせた企みのようだ。 その頃、パパの会

動かないボーナス 毎週ショートショートnote

会社の帰り、今日振り込まれたボーナスを銀行で全額下ろした。 妻と離婚する事が前提の別居が決まり、私の方が家を出る事になったのだ。 子共がいないので少しは気が楽だ。 取り敢えず生活の拠点が必要。 ある程度の荷物を取りに家に戻る。 離婚を申し出たのは妻の方から。 あなたに不満は無いが、やりたい事があると妻は言う。まあ、愛情が無くなったと表に出さないのが、彼女の優しさだと思う事にした。 家に帰ると妻があらかた荷物の整理をしてくれていた。 コーヒーを入れながら、彼女は私に聞いた

消しゴム顔2 毎週ショートショートnote

お母さんに、もう使えないほど小さくなった消ゴムを見せた。 「ちゃんと使ったのね、偉い!」そう言ってくれた。 「新しい消しゴムを買うからお金をちょうだい」 そう言った私に、お母さんは戸棚からサラの消しゴムを取り出し、渡してくれた。 ただの可愛くない、普通の消しゴム。 私は皆んなと同じような、可愛い消しゴムが欲しかったのに。 これから、お金をもらって買いにいけると思っていた。 思い切ってお母さんに言ってみる。 「みんなが持っているみたいな可愛い消しゴムが欲しいの」 思った

消しゴム顔 毎週ショートショートnote

消しゴム顔って、どんな顔なのかな。 そういえば直方体で上部分が白く下部分が青のあのアイコン、消しゴムが青い服着てるみたいじゃない?彼、消しゴムなんじゃない?だったら、ズバリ彼の顔こそが消しゴム顔だわよ。 いや、これだけでは弱いなあ。 彼に直接聞いた方がいいわよね。 でも、神出鬼没な人だから、どこにいるやら。ライン交換してないし、連絡のしようがないんだわ。 でも、大ざっぱには解った気がする。 考えるのも面倒臭くなって、私は文房具のお店に行ってみた。 消しゴムを改めて見

君に贈るランキング 2 毎週ショートショートnote

神様が一人の人間をお呼びになった。 『君は、スナイパーランキング1位と聞いた。その腕が必要なのだ』 「神様はなんでもお出来になるのでは?」 『我々のいかずちは、君達人間の作った武器には既に及ばなくなった。もう我々が地球にいる意味は無い。我々は生まれた星に帰る』 「ええっ!神様は宇宙人だったのですか?」 『人間達が勝手に神と勘違いしただけだ』 『君の腕を見込んで、悪を退治して欲しい。今の地球は悪がはびこっている。こんな星にはもう居たくない』 男は息を呑む。 『君は悪