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毎週ショートショートnote

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たらはかにさんの企画です。410文字ほどの世界。お題は毎週日曜日に出されます。
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2022年5月の記事一覧

1分しまうま 2 毎週ショートショートnote

1分間だけ、シマウマになれるとかの?バーチャル体験ができるとかの?イベントがあるらしい。 今更のバーチャル?しかも1分間だけって、主催者もイベントに参加する人も何の目的があるんだろう。 僕もその無料のイベントに行ってみる事にした。 🎵シマウマのシマをグルグルとって〜 と童謡の『しまうまグルグル』を子ども達が歌い始めた。僕も懐かしくなって小さな声で歌った。 それがイベントの幕開けだった。 奥から一頭のしまうまが登場した。 違和感がある。まるでアニメのように可愛らしくデ

一分しまうま|毎週ショートショートnote

昔しまうまには、あの特徴である縞模様は無かったんですな。 まあ、普通の馬ですわ。 彼らとて、それに何の疑問も無かったんだ。 だがな、やはり例外はあるもんで馬の数頭は自己主張が強く、皆んなと同じである事が許せなかった。   それで神様に願い出たそうでな。何と神様は承知されたんじゃな。 神様はその馬達にどうして欲しいか尋ねられたのさ。 「美しい模様が欲しい」と彼らは答えた。 すると神様は馬達の身体を見事な花柄にしてくれた。 馬達は「目立ち過ぎます。これではライオンにやら

結婚式ゾンビ 2 |毎週ショートショートnote

「ほら今日もやって来た、あの二人」 「可哀想、幸せそうな表情が涙を誘うわ」 男はタキシードで身を包み、女はウェディングドレスとウェディングベールを身に着け、教会に向かっている。毎日毎日、一日も欠かさず。 そして、教会の中に入ろうとするが、見えない力に阻まれ、二人はどうしても教会の中に入れない。今夜も昨日と同じ。ゾンビゆえに。 それを毎晩目撃している村人達は胸を痛めている。牧師でさえ健気なゾンビのために神の加護を願った。 ゾンビ二人が教会を目指すようになって99日目に、

結婚式ゾンビ|毎週ショートショートnote

200年後、人類は皆ゾンビとなる。君らにとっての未来人、つまり私が言うのだから間違いは無い。 君らが思っているほど悪い世界では無い。知性も文明もちゃんと存在するから心配する事は無い。 見かけ?ああ、君らが思うゾンビは映画で見たオゾマシイ姿だろうが、それも否定しておこう。私を見ても君達とどこか違うところがあるかい?無いだろ?ただ…。 確かに、彼はかなりステキ。少し目の色に、紫色が入っている。 ただ、我々には生殖能力が無い。ゾンビ同士であればだ。だから、わざわざこの時代で

プロのバナナ2 |毎週ショートショートnote

君は知っているかい、プロのバナナを。 プロのバナナは20年に一度しか実らない特別のバナナ。 その20年に一度の年が今年なんだ。 店に並んだ先から売れていく。お一人様一本のみしか買えない。 美味いかと聞かれれば、返事に困る。 ハッキリ言うと、実に普通だから。 では、普通のバナナと何が違うのか。 それは色、まさかの虹色に輝いている皮。 不思議だろ?実に幻想的だよ。 つまり、このプロのバナナは皮に価値がある。 中身を食べたら、皮を干す。 カラカラになれば、ピンセットで、

プロのバナナ|毎週ショートショートnote

昔、バナナは高級品で病気の時にしか食べられなかった。 その頃の話。 私が小学生の時、風邪のため家で寝ていた。熱も少しあった。 母は買い物に出る時に「バナナを買ってくるから」 そう言って出かけた。 薄暗くなっても母は帰って来ない。 心細くなり、電気を点けようと体を起こした。 その時私は見たのだ。 小さいおじさん(25cm程度)が、私の目の前を歩いているのを。しかもバナナを一本肩に担いで、足を軽快に大胆に上げてリズム良く。 私の事など気にして無いようだったが、急に立ち止

みんなで動かない|毎週ショートショートnote

1960年代にNHKで放送された「ふしぎな少年」という子ども向けのドラマがあり、主人公の少年が『時間よとまれ』と言うと時間が止まる。その間に事件を解決した。 「時間よとまれ」 子供達はこぞって、事あるごとに叫んだ。 誰かが叫ぶと、周りにいる子供達みんなで動かないように頑張る。 昔は近所の子供達とよく遊んだ。年齢は混ぜこぜ。 だから、その名セリフを言えるのは年長の子だけ、私達チビたちは従うのみ。 それでも楽しかった思い出として私の心に残っている。 昔の新聞に銀行強