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小説、エッセイ、俳句etc
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2024年3月の記事一覧

私のイチオシ(手前味噌ですが)

三羽 烏さんの「イチオシください」に参加させて頂きます。 2022年の作品ですが、私的には気に入っているものの一つです。 410文字のSSです。 三羽 烏さん、よろしくお願いいたします。 #itioshi

手のひらの恋 青ブラ文学部

私には密かに憧れているお方がいる。 叶わぬ恋。幼い時に一度だけ出会った事がある。彼が迷子になった時、母と一緒にお屋敷まで道案内をしたのだ。 それからずっと、彼は私の王子様だった。彼を見かける度にときめいた。 そして今でも。一度だけでも会いたいという気持ちは変わらない。 私は禁断の方法に手を出してしまった。 村外れに住む魔女に願ったのだった。 魔女は高額な報酬を要求したが無理な話。 私はすごすごと魔女に背を向けた。 魔女は別の取引をしようと持ちかけた。 私の若さを欲しいと言

お化けの暗々 青ブラ文学部

お化けの暗々はまだ新米。暗々のお母さんは、素敵に怖い顔。暗々は羨ましくてたまらない。 お母さんを見れば、人間だけでなく動物達まで尻尾を巻いて逃げていく。いいなあ。大きくなったらお母さんみたいになれるかなあ。 暗々のお母さんはとても心配していた。暗々は人間で言うところのかわい子ちゃん。お化けの世界では大成できないだろう。 以前は美人だったが、夫のせいで有名なお化けとなったお岩さんに暗々裏に相談したお母さん。 お岩さんは、元は人間だったので可愛い暗々を可哀相にも思った。 「

合わせ鏡 青ブラ文学部

私の部屋にある鏡は、ひいおばあちゃんにもらったもの。アンティークな作りが気に入っているんだ。 お母さんも羨ましいって言うほど素敵なのよ。 お母さんの鏡台は三面鏡、花嫁道具の一つだったって。私はひいおばあちゃんにもらったこの一面鏡と一緒にお嫁に行くつもり。 私が14歳になった日、私の鏡が話し始めた。 合わせ鏡をして遊んでいた時だった。 とても優しい声だったから少しも怖くはなかった。 それに声の主はひいおばあちゃん。会った記憶はないけれどすぐに分かった。 「ヨウちゃん、私が

夕焼け小焼け 青ブラ文学部

子供たちが『夕焼け小焼け』を歌いながら遊び先から、それぞれの家に帰っていきます。 ふと見上げれば美しい夕焼け。 子供たちは歌いながら、夕焼けに向かって手を振っています。 「また明日ねー」 夕焼けも、そっと目立たないように子供たちに手を振るのでした。 『また明日、子供たち』 それを空のうんと高いところで、スタンバイしている朝焼けがその様子を見ていました。朝焼けの唱歌はありません。子供たちに歌ってもらっている夕焼けがとても羨ましくてたまらない朝焼けなのです。 でも、朝焼け