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小説、エッセイ、俳句etc
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2021年11月の記事一覧

金持ちジュリエット

その美しい娘、ジュリエットの家は大変な資産家だ。 しかし、彼女はこんな生活にウンザリしていた。先祖の残した資産でヌクヌクと生きていくだけなんて、何の面白みも無いではないか。退屈なだけだ。 彼女は自分の力だけで、人生を切り開きたかった。 彼女は決心した。家を出る事を。 つまり、家出。 軽く身支度を整え、地下室の秘密の通路から外へ出て行くのだ。家族以外知らない通路。 しかし、どうした事だろう。しばらく歩くといつもの通路が二股に別れていた。片方の道は土壁が壊れた事で現れた

神様のマッチ #ショートショートnote杯

僕はトシに電話した。  「なんだ、お前か。なんだよ」 トシの対応はいつも同じだ。 「今度のショートショートの作品募集、出すぞ、お前も出せよ」 僕らは、短い小説を書いては色々投稿している。 「えーっと、お題は何とか神様?なんちゃら?」 「そう、神様のマッチだ」 「ええっ??、ほんとかよ?俺の為のお題じゃないか、びっくりだなあ!もちろん書くよ、お前も頑張れ、またな!」 言いたい事だけ喋ると、トシは電話を切った。トシのテンションがなぜ突然上がったのか不思議だった。ま、いいか。

神様の違法行為 #ショートショートnote杯

ここがどこだか分からないまま歩き続けている。いつから、なぜ、歩き出したのか記憶が無い。人が住んでいる様子も無い、ただ草原だけが続くこの道。 振り返ると、歩いて来たはずの道は無くなっている。 ただ、前に進む道があるだけだ。 その頃、空の上では裁判が開かれていた。 まさに神様の弾劾裁判だ。 違法に人間を神にしようと企んだ神様が裁かれている。 「しかし、悪い人間が増えすぎて我々だけでは手に余る。地球が消滅するのを黙って見てはいられない。神の手は猫の手でも借りたい程不足している

夢の薬 #ショートショートnote杯

悪魔のような姿の男が、断りも無く私の前に忽然と現れ、一方的に話し出した。 「あなた、恋人はいませんね?」 いきなりの問いかけ、私はめんくらう。 構わず、彼はゆっくりとした調子で話し続ける。 「夢の薬を頭に思い浮かべるなら、若い人ならば、ほれ薬。まさに夢のクスリ。 でも、この薬が存在する事を殆どの方はご存知ない。 しかし、それは存在するのです。作った私が言うのだから間違い無い。 今こそ願いが叶うのです。ただし、手づくりのため僅かな方にしかお届けできない。まさにあなたが選ばれ