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神様の違法行為 #ショートショートnote杯

ここがどこだか分からないまま歩き続けている。いつから、なぜ、歩き出したのか記憶が無い。人が住んでいる様子も無い、ただ草原だけが続くこの道。

振り返ると、歩いて来たはずの道は無くなっている。
ただ、前に進む道があるだけだ。


その頃、空の上では裁判が開かれていた。
まさに神様の弾劾裁判だ。
違法に人間を神にしようと企んだ神様が裁かれている。

「しかし、悪い人間が増えすぎて我々だけでは手に余る。地球が消滅するのを黙って見てはいられない。神の手は猫の手でも借りたい程不足している」
被告席の神様の弁明だ。

裁判官は頷く。
「気持ちは分かるが、違法行為は違法行為だ。被害者が神の領域に入る前に発覚して良かった」

 
判決が下り、被告の神様は人間に格下げとなった。 何も知らず歩き続けた被害者は元の世界に帰された。彼を待っていた者達はどんなにか喜んだ事だろう。

世にいう「神隠し」の語源となった話とか。