一冊の本 #シロクマ文芸部
一冊の本を埋める。
それにどんな意味があるのだろう。
聞いた話では、それが彼女と付き合うための条件だそうだ。
本を一冊埋めさえすれば、彼女と楽しい時間を共にできる。ならばお安いご用だ。
でも、何か引っ掛かる。
彼女は大の読書家で、本を愛してやまないはずなのに、なぜ埋めねばならないのか理由が知りたい。
次の日、隣のクラスの彼女が廊下に姿を現すのを見計らい、彼女に声をかけた。
ぼくの質問に彼女は首を傾げた。
「変な話ね、そんな事を私言った事ないわよ。でも、何でそんな話が広まっ