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ショートストーリー

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短い創作小説を置いています。
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#童話

太郎の物語(ショートストーリー)

昔々、あるところに裕福な村がありました。その村に太郎という名の青年が住んでいました。太郎は村の庄屋の息子で幸せに暮らしていましたが、父親が亡くなると小狡い叔父が庄屋となり、太郎は村を追い出されてしまったのです。 太郎がトボトボと当てもなく歩いて行きますと、川で一人のお婆さんが大きな桃を手に、なにやら困っているようでした。 太郎はお婆さんに声をかけました。するとお婆さんに、桃を家まで運んで欲しいと頼まれたのです。 太郎は大きな桃に驚きましたが、心優しい太郎は大きな桃を運んで

銀河の片隅で(ショートストーリー)

ただただ、宇宙は広い。こんなお話はいかがでしょうか。 銀河の片隅に青い小さな星がありました。 小さな星はひとりぼっち。 少し離れたところに赤い星があるのですが、赤い星はずっとどこか遠くを見ているままで、一度だって小さな星の方に顔を向けてはくれません。 小さな星の周りに赤い星以外の星は見当たりません。 小さな星は時々歌を歌います。流れ星達が通り過ぎる時、歌を歌いながら落ちていくのです。その歌を小さな星は覚えているのです。 小さな星が歌を歌えば、赤い星が一緒にハミングしてく

姫の種(桃太郎のパロディ)

昔、昔、ある貧しい村にお爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんは川に洗濯に、お婆さんは山に柴刈りに行きました。 家庭もそれぞれ、夫婦もそれぞれ。 お爺さんが川で洗濯をしていると、川上から大きくて真っ赤な何かが流れてきました。それは見たことも無いものでしたが、とても美味しそうに思えました。 その大きなものを手にすると、なんとも言えない良い匂いがします。きっと食べられるものだと、お爺さんは大喜びで抱えて家に帰っていきました。 その頃、お婆さんは山仕事をして、帰りは柴を刈り