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ショートストーリー

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#猫

トイレの猫 ショートストーリー

トイレに入る。入る理由がある。 勿論、通常の使用ではない。 その女子トイレの奥の個室を七回ノックする。 それが合図。 ドアを静かに開けると、そこは確かにトイレ。『どこでもドア』などでは無い。 そのトイレには猫がいる。 住んでいるようでもあり、気まぐれに現れるだけなのかは不明。 ドアを七回ノックすると現れることが多い。 時々、言葉を交わすようになった。 誰かに飼われているのではないかと思うほど毛並みの美しい白猫。 最初は驚いたが日本語を話す猫。お互いの好奇心が高まった。

愛を量る(ショートストーリー)

「深い愛をご主人から貰えるのは猫より犬の方だな」 犬は自慢げに言う。 「そうかな?」 猫は意味ありげに笑った。ついでに小さく鼻を鳴らす。 「飼い主に溢れるほどの愛を捧げるのも犬さ」 「では、自分は二の次なのか?自分の人生なのに?」 「そうさ、そうすればご主人も大きな愛を返してくださる。喜びさ」 「私のご主人は、いつも私の愛を欲しがるが、私は気まぐれにしか添わない」 猫は尻尾を立てて、どこが得意げだ。 「ご主人の愛は、チュールの数でわかる」 猫は歩き出し、振り向きざま

黒猫白猫(ショートストーリー)

「黒猫と白猫、どちらがよろしい?選びたくなければ産まれた時のお楽しみとなります。どうしますか?」 神様のところで猫になりたい列に並び、産まれる順番を待っていたんだ。 その時、優しく天使にそう聞かれたんだよ。 「ボクどうしようかな。どっちでもいいな。ウ~ン、黒猫がいいかな」 そう答えた。 僕の後ろに並んでいた子も 「私も黒猫か白猫だといいなぁ、じゃあ白猫にします」 そう答えていた。ちょっと可愛い子だった。 天使はメモ帳に何か書いている。みんなの望みを間違えないようにメモして

黒猫(ショートストーリー)

ある日、黒猫を見た。 結構大きな猫だった。 私はイラストやアニメに描かれる黒猫は好きだけれど、本物は少し怖い。 鋭い眼差しで、こちらの心の奥底を覗かれているような気がするのは私だけだろうか。 それから1週間ほど過ぎた時、私はまたあの黒猫に出会った。と言うより黒猫が私の後を歩いていたのだ。 私は気配を感じ、ふと振り向いた。黒猫は私が振り向く事を想定してなかったようで、一瞬猫の目が泳いだ。 「うちでは飼えないよ」 思わず声をかけた。 黒猫は姿勢を低くし、私を上目遣いで見据え

学校(140字小説)

ボクは猫に生まれて幸せだったのかな。飼い主さんは優しいし、ご飯もおいしい。でも、何だか物足りないんだ。欲張りかな。 ボクの住んでいる家のシン君は、毎日学校に行って勉強している。 エライ人になるためだって。 ボクはずっと猫のまま? エライ人にはなれないの? 学校に行けば良いの? 誰か教えてよ。 140 猫って、考え深げにしている時がある。 何を考えているのだろう。 考えているとしても、猫語なんだろうけれど。猫と意思疎通ができる日は来るのかな。 いや、来ない方がお互いの