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ショートストーリー

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#詩

ねんねの赤子 詩

ねんねの赤子の見た夢は 星の世界のお母さん ただいま 星の世界のお母さん 星めぐりの旅から帰ってきたよ ボクはこれからどうするの 一番好きな星に行くのです 嫌だよ嫌だ 星の世界のお母さん ずっとずっと一緒だよ 私の役目は終わったよ 行くべき場所が待っている さあ、お行きなさい 可愛い子よ 私の子よ ねんねの赤子は 夢から覚めた 優しい声が聞こえたよ 優しい手に包まれた ねんねの赤子は 忘れていった 星の世界のお母さん **************** 赤ちゃん

この街 詩

この街に 雪がチラチラ舞い始め ずっとずっと降り続く 都会の雪の儚い夢 積もる事なく消えていく 名前のない大通り  彷徨いながら歩くだけ ひとつひとつの思い出は  虫食い穴に捨てていく 思い出達は楽しげに 私を残して消えていく サヨナラくらいは言ってよね 言えなかったのは私も同じ  都会の夜は明るいけれど 暗闇の方が多いの 流す涙は隠さず歩く 明と暗の際 探しながら迷いながら ねえ、見えるでしょ 目的地のはずだった 遥か遠くの雪の住処 見えるだけで何も無い 終わりの

夜の作家(ショートストーリーのような、詩のような)

月明かりがあなたの窓辺に届く夜 フクロウが始りを告げる夜 明日葉の花が咲く時を忘れ ただ春の夢を見る時 そんな夜に広げる古い本 前書きも後書きも 知らない文字で書いてある 物語は白紙のままに そのままで あなたが紡ぐ物語り 主人公を決めたなら 夜の世界を突き進め 原稿用紙を埋めていく 知らない文字は踊るだけ 知らない人の無駄話 知らない世界のその中は 内緒の話で満ちている さあ書いて あなたの文字で あなたの言葉で 主人公の願いを知るために あなたの願いを忘れるために

ファソラのシドレミ

ファソラのシドレミって知ってる? まだ知らないの? 私とお母さんのナイショのおまじない 悲しい時、怒っている時、寂しい時、痛い時 そんな時、こう言うの ファソラのシドレミ するとね 悲しみも、怒りも、寂しさも、痛いのだって飛んでいく いつだって魔法のことば ファソラのシドレミ 今では私と娘のおまじない お母さんもおばあちゃんに教わった あなたも女の子が生まれたら 教えてあげて魔法のことば ファソラのシドレミ 女の子だけの秘密のことば ファソラのシドレミ 男の子だけの

冬の精『詩』

地味なピンクのあの帽子 毛糸で編んだあの帽子 毎年冬が近づけば 頭にチョコンと載せてやって来る おばあさんがやって来る 毎年毎年待ってるの  おばあさんに出会える日 冬の訪れ感じる頃に 微笑み交わすそのために おばあさんは私かも 今年はきっとわかるはず 毎年毎年そう思う 冬の精の証なの おばあさんのあの帽子 冬の精がおばあさん 知らないわよね誰だって 雪のように儚げで 溶けてしまいそうな女の子 おばあさんも若い頃 そんな日々があったはず 私はずっと待っている