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ショートストーリー

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#黒猫

黒猫(ショートストーリー)

ある日、黒猫を見た。 結構大きな猫だった。 私はイラストやアニメに描かれる黒猫は好きだけれど、本物は少し怖い。 鋭い眼差しで、こちらの心の奥底を覗かれているような気がするのは私だけだろうか。 それから1週間ほど過ぎた時、私はまたあの黒猫に出会った。と言うより黒猫が私の後を歩いていたのだ。 私は気配を感じ、ふと振り向いた。黒猫は私が振り向く事を想定してなかったようで、一瞬猫の目が泳いだ。 「うちでは飼えないよ」 思わず声をかけた。 黒猫は姿勢を低くし、私を上目遣いで見据え

黒猫ジジのハロウィン

ここ、動物のタレント事務所は、夏になると黒猫タレントが引っ張りだこになる。 言わずと知れた、ハロウィンの写真撮影の追い込み。 事務所の商標は、魔女の宅急便のジジによく似た黒猫になっている。魔女の宅急便が上映されるより前からなので商標はジジではないのだが、殆どの人は商標はジジだと思っている。事務所はわざわざ否定はしない。 しかも、黒猫タレントにジジと名前をつけている。今のジジは何代目だろう。ジジの名は霊験あらたか。 そんなわけで、ジジは猫タレントの中ではダントツの稼ぎ頭。

魔法使いの弟子(ショートストーリー)

「ねえ、おばあちゃん。お願いがあるの」 「なんでも言ってごらん」 おばあちゃんは、いつだってそう言ってくれる。 挨拶のようなもので、話を聞いてくれるだけがほとんどだけど。 おばあちゃんに話を聞いてもらうと、それだけで半分解決した気分になるんだ。おばあちゃんの事、大好き。 だけど、おばあちゃんは皆んなのおばあちゃんとは同じようでかなり違う。 だって、私のおばあちゃんは魔法使いなんだから。 勿論、これは家族だけの秘密。 おばあちゃんの息子の私のパパは、魔法使いにはなれないの