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ショートストーリー

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短い創作小説を置いています。
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2023年10月の記事一覧

蛍光灯(ショートストーリー)

1Kのひどく古いマンションの一室。 ここでの生活も長くなったが、ずっとここで暮らしたいと思っている。 やはりだ。丸型の蛍光灯が暗くなり、点滅をし始めた。 寿命が近いのは覚悟をしていたが、困った。店はもう開いていない。懐も寂しい。 そうこうしていたら……、消えた。チカッとも光らない。何度もスイッチをカチャカチャしてみたが無理なものは無理。 明日までは豆電球とキッチンの照明だけが頼り。 翌朝、ゴミ置き場に蛍光灯を二本捨てた。 その時、同じような蛍光灯が二本、ゴミ置き場の奥に

アルバイトは悪魔(ショートストーリー)

お金が欲しい。もちろん生きていくために。 アパートの今月の家賃は払えそうにない状況。こんな事初めてだ。食べるものも底をついた。 あいつのせいだ。あいつは悪魔に違いない。 そう思っていたら現れた。 「なあ、金くれ」 「貸してくれ、ならわかるけど、くれって何?」 「では、貸せ」 どう言うわけかわからないが、変な男にまとわりつかれている。 お金を貸せと言うだけだが、なぜか私は断ったり、逃げたりができない。 警察に行こうとしても、足が向かない。まるで魔法か催眠術をかけられたように

怖い顔(140字小説)

怖い話を書いた事が無く、一度チャレンジしてみようと思い書き始めた。 一晩、頭を抱えたが夜が明けた。 ふと見た鏡の中で怖そうな老婆が私を睨みつけている。 鏡が故障! 鏡の設定は可愛い乙女のはず。業者を呼ぶ。 鏡の業者はお詫び方々、山姥の顔の需要に応えてくれたら高額なお礼を約束すると申し出た。 🐈‍⬛最近、白雪姫の継母の気持ちが少しわかる気もするような、しないような。鏡って正直すぎて嫌いです😮‍💨  めい #140字小説 #山姥

愛を量る(ショートストーリー)

「深い愛をご主人から貰えるのは猫より犬の方だな」 犬は自慢げに言う。 「そうかな?」 猫は意味ありげに笑った。ついでに小さく鼻を鳴らす。 「飼い主に溢れるほどの愛を捧げるのも犬さ」 「では、自分は二の次なのか?自分の人生なのに?」 「そうさ、そうすればご主人も大きな愛を返してくださる。喜びさ」 「私のご主人は、いつも私の愛を欲しがるが、私は気まぐれにしか添わない」 猫は尻尾を立てて、どこが得意げだ。 「ご主人の愛は、チュールの数でわかる」 猫は歩き出し、振り向きざま