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ショートストーリー

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2023年5月の記事一覧

無駄なプレゼント(140字小説)

古希にICカードが送られてきた。送付したのは国だが、何に使えるカードか説明は皆無。問い合わせてみた。 「今にわかりますから楽しみにしていてくださいね」と優しい声のエンドレス。 ずっとワクワクして待っている。もしかしてワクワク感だけのプレゼント?カード作成にも千円くらいかかるのよね? 古希に国からICカードは届きませんでしたが、市から市内だけ割安で乗れる路線バスの交通カードが送られてきました。来月から使えます。ウフフです。 #140字小説 #ショートショート #ICカード

母のワンピース 【ひと色展】 

母の夢を見た。 顔がアップになって、ただ私を見つめていた。 「おかあさん」 小さな声で呼んでみる。返事は無い。 母は、私にとって思い入れのある服を着ていた。 母の着ていた服の色は、いつも同じような優しい色だった。 その頃は茶色だとしか思わなかったが、大人になってその色がローアンバーと言う色だと知った。 そして、今日の夢の中で母が着ていたのが、私が社会人になって初めて母にプレゼントしたワンピース。夢の中の母によく似合っていた。   母がもったいないと言ってなかなか袖を通し

かなちゃん(140字小説)

通勤時、花屋の前を通る。 店の前を掃除している彼女。 花屋の店主は「かなちゃん」と呼んでいる。彼女についての情報はこれだけだ。 「おはようございます」 「おはようございます。いってらっしゃい」 彼女の声は私に元気をくれる。元気メーターはMAXだ。ぼくは背筋をピンと伸ばす。 今日も頑張れるぞ。 こんな些細な出来事が、毎日の自分を支えてくれている気がします。 私にとっての優しい出来事。 時々出会う、ボウヤとお母さん。 ボウヤは、私に出会うと手をニギニギにして、パイパイして

正と正子 春ピリカ応募

私のおじいちゃんの名前は正(ただし)おばあちゃんは正子(まさこ)という。なんか笑える。でも素敵な気もする。二人はお見合いで結婚したそうなの。驚く事に、二人は結婚までに一度しかデートした事が無いんですって!信じらんないわ。でもママは、当時は珍しい事じゃ無かったって言ってたけど。マジみたい。 二人は見合いの席から料亭の庭に出た。ただ、黙って庭を歩く。 正子の前を歩いていた正はいきなり振り返り、正子の目を見て言った。 「実は見合いをする前から、あなたを知っていました。仲人にあ