「カード師」感想文

「暗いことで人に迷惑かけるの、やめようと思ったんだよ」


給食中も本を読んでいた私が、スマホを手に入れてから本を読む機会がめっきり減った。
そんな自分に読書の楽しみを思い出させてくれたのが、中村文則さんの小説。

2016年にタイプライターズという番組の次回予告で知り、翌日図書館で「何もかも憂鬱な夜に」という本を手に取った。1ページ目を読んで、この作家さん好きだ!と思った。

放送を見て印象に残った言葉がある。「暗いことで人に迷惑かけるの、やめようと思ったんだよ」小説で暗い部分を発散し、人前では明るく生きることができる。なるほど、本にはそういう力があるのか。

それ以降、私も中村さんの本で暗く深い世界に沈み込んで、最後の「共に生きましょう」というメッセージで現実に帰って、明るい人間として頑張っている。

大学受験の挫折から、毎日毎日、“人に迷惑をかけずに死ぬ方法”を検索していた私を「共に生きましょう」という言葉が何度救ってくれたかわからない。この場を借りてありがとうございます。

「カード師」を読み終わった感想。

読み終わって率直な感想
コロナ禍で疲弊している私たちに寄り添って、また明日から頑張ろうと思わせてくれる話。

中村さんの小説にしては明るい。

主人公の周りの事態は決していい方向に終わったわけではない。それでも、読み終わった後は明るい気持ちになった。

2021年に入ってから緊急事態ばかりで、全然状況は良くないけれど、なんとか希望を見出して頑張るしかない。
そんな気持ちになった。

主人公は占いを信じない占い師

私は正直占いを信じていない。
占いで人生がわかるわけがないし、占いに行く事はお金がもったいないと思っている。
朝のテレビの占いも信じていない。

主人公の占い師は、客の心を汲み取っていい方向に向かうように占いを仕向け、アドバイスする。
占いってぼったくりじゃないんだ。
占い師は迷える客に希望を持たせる仕事。夢がある。世の中捨てたもんじゃないなって思った。

そして、中村さんがおっしゃっていたように、小説の中の占い師の占いは結構当たっている。
そこが、話を読み進める上でワクワクする。

情報量

「掏摸」を読んだ時にも思った事で、参考文献の数がすごい。タロットやディオニュソス、魔女狩りなどのシーンなど、かなり研究して書かれているんだろうなと感じる。
そのおかげで、私たちは一冊の小説を読むだけで、自分の知識が広がった気分になる。

R帝国に沖縄戦のシーンが出てきたり、今回の「カード師」でペストについて触れていたり、中村文則さんの小説を読むだけで社会の勉強にもなる。

こういう情報量の多さが、私が中村さんの小説が好きな理由のひとつでもある。

そして、対談でおっしゃっていた女性を○、男性を□で表しているということに、私は気がつけなかった。
そういうところまで、気がつけるようになったらもっと本を読むのが楽しくなるんだろうな。悔しい。

右下の腐ったケーキ

私が1番好きなシーン

「近所のケーキ屋さんの右下にあったケーキが腐っていたと思う。傷んでいると言えばよかったのに、そのままにした。あれを誰かが買って食べていたら、食中毒で死んだかもしれない。この間近所で行われていたお葬式は・・・」

私も、時々こんな変な想像が頭を離れなくなることがある。加害恐怖の強迫観念。

私は強迫性障害の傾向があるから、このシーン に共感できて好きだけど、普通の人がこのシーン読んだらどう感じるんだろう?

はちゃめちゃだと思うのかな?

とにかく     

コロナ禍で気持ちが沈んでいる今、読む必要がある本だった。


読書感想文なんて普段書かないから
拙い文章で申し訳ないけど
私が1番好きな作家さんの読書感想文が募集されていたので、頑張ってみた。

読んでくれてありがとうございます😊



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