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「透明になれなかった僕たちのために」

「透明になれなかった僕たちのために」佐野徹夜


「君は月夜に光り輝く」など中学生の頃からずっと読んでいた佐野徹夜さん4年ぶりの新作。
ずっとずっと待っていたので嬉しすぎたし内容も最高だった…!
決して軽い気持ちで読める物語ではなかったけど、本当に読んでよかった。

アリオとユリオ、幼馴染の深雪は、自分の中に潜むある欲望に苦しみつつ成長する。ユリオの自殺、連続する殺人事件を契機に驚愕の真相が明らかになっていくが… 著者渾身の青春サスペンス。

物語としてももちろんよかったのだけれど、それ以上に佐野さんの言葉が心に刺さりすぎた。
佐野さんのXの投稿を読むと、この本を書き上げるのに相当苦労されたようで。それが文章からもひしひしと伝わってきた。きっと真剣に生と向き合われたのだなと感じる言葉がたくさんあった。
いくつか紹介したい。

問われているのはセルフコントロール能力、自己を適切に偽ることができる能力の有無だ。現代を生きる限り人は「お前は自分をうまく偽ることができるか?」という類の無数のテストに晒され続けることになる。そして、その回答に失敗するたび、少しずつ損をするように現代社会は設計されている。その損は積み重なるとやがて取り返しがつかないほどの差になる。もし自分が社会的に好ましい内面を持っていないなら、いわゆるいい人ではないのなら、嘘をつくスキルは生存のために重要だ。

p172

幼少期から自分は周りと違うと感じていて、でも周りとうまくやるために自分を誤魔化して生きてきた私にとって、この言葉は私を肯定してくれているように感じた。でも自分を偽らなければ生きていけない社会って何なんだと思う。

人は生きようと思って生きているのだろうか。人は自分の意思で生まれてくることも生まれてこないこともできない。個体としての人の生に、本来、意思が介在する余地はなさそうに思える。(略)人ができるのは自分の意思で呼吸を止めることだけだ。

p240

私は生きる意味とかよく考えたりするけれど、最近はそんなものないんじゃないかって思うようになった。

生まれたから生きてる。ただそれだけ。

人間は意識があるから生きる意味とか探してしまうけれど、例えばそのへんの花とかは「なんで私はここで咲いてるのだろう」なんて考えたりしない。(もしそんなことがあったら非常に面白いと思う…笑)

それでも私は生きる意味を探したい。というか、欲しい。きっと何も出来ずに死んでしまうんだろう。でも「あぁ、この瞬間のために生きてきたんだ」って思える時間が欲しい。今まで悩んだり苦しんだことが全部全部報われるような、そういう瞬間を生きたい。

それがきっと、私が"生きていく意味"なのかなと思ったり。

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