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キャッチャーインザライとベトナムシンドロームの関係性


少し前にNHKで話題になった「キャッチャーインザライ」
を読んだ。
数々の作家達に高評価されている小説だ。
日本語版「ライ麦畑で捕まえて」だ。
1950年代の作家、サリンジャーの本だ。

ところがこの本、第二次世界大戦後、極悪本である、共産主義的な敗退者の本だ等と揶揄された。
ニューヨークに住む少年と妹の物語なのだが、当時は労働者にされていた少年達が、タバコを吸い、飲酒をし、稼いだお金で売春婦を買ったりと不健全だと、所謂保守層に反感を買ったのだろう。

因みに筆者もどちらかと言えば保守層である。
しかし、読んでみて、極悪共産主義本「蟹工船」とは全く違い、労働者の少年の苦悩、妹とのやりとり等、「蟹工船」の質の悪さと全く違う。
蟹工船はプロレタリアートこそ至極等、バカげてる。
それに引き換え、キャッチャーインザライは質が高い。


筆者が若い頃はバブル期絶好調の時代だった。
恥ずかしながら、筆者もご多分に漏れずディスコ通いをしていた。
当時ディスコで流行ってた曲、「ナインティーン」と言う曲がガンガンかかってた。
筆者はちょっと暗めな感じだけど、ノリは良いじゃないと踊りまくっていた。

何回か聞いている内に「平均年齢19歳」
「サイゴン」
「ベトナムシンドローム」
と言うワードが耳に入ってきた。
よくよく歌詞を和訳すると
ベトナム戦争の米兵の平均年齢は19歳
サイゴンでの壮絶な戦いで精神を病んで行った

とてもディスコでかかる様な軽い歌詞ではない。
アメリカの19歳の少年達は、アメリカが正義だと信じベトナムへ赴いたが、ベトコンの激しい抵抗、映画「ハンバーガーヒル」
等に表されてる様に身体がミンチになって行く死体の数々を見て精神が病んで行った。
酒でごまかされる様な簡単な状態じゃない。
薬物中毒者がどんどん増えていった。
アメリカの若者達は薬無しではこのベトナム戦争を乗り切れなかった。
そして事実上のアメリカ敗戦。
大国アメリカが初めて敗れた。
生き延びて帰国した米兵達は最初はもてはやされたが、アメリカ社会の中で次第に厄介者になって行く。
片足、片腕、両足、両手を失った者達、精神を病んだ者達。
次第に帰還兵は酒に溺れ、「我々は英雄だ?」と
叫びだす。
その中で帰還兵たちに良く読まれていたのが、キャッチャーインザライただ。

今の社会に疑問を持つ。
国に誤魔化され労働者となっている自分に疑問を持つ。
実はアメリカに根深くある差別WASP
WASPとは「ホワイト アングロサクソン プロテスタント」
の略だ。
所謂アメリカの入植順位。

アメリカンフットボールを見ればWASPが現在でも根付いているのは明白だ。
野球より、最高に人気のアメリカンフットボール。
大体花形のフォワードは白人。
そしてたまに黒人が少々。
我々黄色人種等は一昔前はチームにも入れない。
作者のサリンジャーは白人だが、父親がユダヤ人であった。
それだけで、大学等のグループ、サークル等から弾きだされた。
そんな中、サリンジャーは「キャッチャーインザライ」
を書いた。
そんなサリンジャーや、物語の主人公の少年に思いを寄せるのかわからないが、とにかく帰還兵達に良く読まれたらしい。


そして、あの事件が起こった

「レーガン大統領襲撃事件」

犯人は「キャッチャーインザライ」
の愛読書だったと言う。

ここからまた所謂「反戦本」
の烙印を押される。

レーガン大統領時代は東西冷戦時代。
レーガン大統領は西側諸語の象徴であり
強いアメリカの象徴であった。
そのレーガン大統領襲撃事件だから、保守層からの反感は大きかった。

しかし、筆者は思う。先ほど述べたが、筆者は保守だ。
国防は大事だと思うし、自国が侵略されたら戦わねばと思う。
だが、キャッチャーインザライが共産主義本に烙印を押されたのは残念だ。
決して反戦本でもない。
若者の疑問や、差別を疑問に思い叫ぶ、若者の美しい物語と筆者は思う。

皆様方は「キャッチャーインザライ」
をどのように感じるのであろうか?
私はこれもまた、国策により流動的に烙印を押されたものだと思う。

一昔前はアメリカ人は原爆投下は戦争を終わらせる為の盛儀だと信じる人が多かった。
しかし今はアメリカ人も原爆投下は過ちだと言う人が増えている。

キャッチャーインザライも最早反戦本で無くなる日は近い






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