安心を求めて
仕事始めである。
本日の業務は、資料作成とお茶くみ。
所要時間は全部で20分。
1日の労働時間は8時間、そのうちの20分で今日の業務がすべて完結してしまった。
年始1発目とはいえとても営業担当の正社員とは思えない働きぶりだが、ほぼ毎日こんな感じで勤務しており、大して忙しくもないこの仕事に飽きてきた私は、昼食を食べながら転職サイトを見始めた。
某転職エージェントで受けられる適職診断なるものが目に留まり、「果たして私はどんな仕事が向いているのか」と期待を込めてサイトへ飛んだはいいものの、診断を受けるには会員登録や転職の意思表示が必要であった。
え、待って待って、そんな急ぎで転職したいわけじゃないし面談の日取りとか急に言われても困るんだけどちょっと待って。
ここまでやきてようやく、過去何度もこのサイトで同じ目にあって、毎回適職診断までたどり着けずにそっとページを閉じていたことを思い出す。
元来私は、ネットに散見する「○○診断」やら「○○占い」なんかにめっぽう弱い。
悩み事やら気になることがあるとすぐにGoogle検索やYahoo!知恵袋で答えを導きだそうとする癖があり、恋愛も、仕事も、家族との仲やら趣味嗜好に至るまで、ネットで知識を得て初めて、自分の考えに自信が持てるのだ。
親の教育とか、育った環境とか、いろんな要因から「自分で決める」という行為が苦手になったんだろうが、それらはつまるところ言い訳に過ぎず、単純に「失敗したくない」「間違えたくない」「嫌われたくない」が練り合わさって、お豆腐メンタルの意思弱人間になり下がったのである。
しかし、ネットが発達した現代においては、私のような人間は数多存在しており、そういう人たちのためにまとめサイトや○○診断が作られ、日夜診断結果や自分の状況に類似する何かが見つかるまで、ネットの海を駆け回っているのではないだろうか。
恋人とうまくいかなければ、姓名相性診断を。
体調不良には、生活習慣病チェックリストを。
転職には、適職診断を。
みんなそうやって、自分の状態に名前や診断結果がつくことで、安心を手に入れているのではないだろうか。
自分にピッタリな診断結果がつかなければ、また新たな診断サイトをめぐり、Yahoo!知恵袋に新たなトピックが立ち、そうやって世界は回っていくのである。
そんな事を考えていたら、あっという間に昼休憩が終わり、永遠に完成しない”資料作り”と銘打った時間つぶしを終え、退勤時間ぴったりに帰路に就いたのであった。
マジで転職したい。
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