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キモチの換気、さりげなく。

「江戸の知恵を授ける」というコラムを書かせて戴き早1年が経ちました。
スマイラー編集部T口さんによって着実に「笑えるエロ話」にテーマの置き換えが進んでいる事はさておき、今後とも微力ながら誌面を賑わせられる様に精進して参ります。

さて今回は一旦?原点に戻り『干天の慈雨』という聞き慣れない言葉をテーマにコラムを書く様にと編集部T口さんからお題をいただきました。

【干天の慈雨】:日照りが続き、雨がいっこうに降らないタイミングで恵みの雨が降る事。
転じて、待ち望んでいたものが叶えられる事。困難な時に救いに恵まれる事。

さて、どうしたものでしょうか。
とりあえず近所の地酒バーのカウンターで顔見知りの常連さん達に相談してみました。

事情を説明すると、黙って燗酒を飲んでいた江戸オタクのタツオさんが静かに口を開き始めました。

 
「家康が江戸づくりを始めると、建設ブームに沸く新興都市に職を求めた若い労働力が大量に流れ来たんだけど、その輩達にとってギンギンな性欲をどう処理するかが切実だった。

てゆーのも建設途上の都市だけに男が圧倒的に多い。
のちのち五街道整備に合わせた旅籠で飯盛女が性を売り出し始めるんだけど、若い野郎共にとっては、まさに干天の慈雨だったんじゃないかな?」

タツオさんは盃をグイッと飲み干し、「マスターもう一本燗つけてよ」と、おかわりを注文しました。バーカウンターの常連さん達は「使い方がさりげなくて渋い!」などタツオさんを褒め讃えました。

しばらくするとマスターが、「タツオさん、燗酒おまたせ。滋賀県の純米大吟醸「干天の慈雨」です」とタツオさんを上回るさりげなさで同名の燗酒を持ってきたのです。

それまでタツオさんに釘付けだった視線がマスターに集まり、「そんな酒あるのかい」と一同驚きました。
皆の注目に気を良くしたマスターは常連さん達に一杯ずつご馳走し、バーカウンターは盛り上がりました。


飲食業界にとって辛い日々がまだまだ続きますが、少しずつでも悪者にされていた飲食店に客足が戻り活気がでてきた。

この酒の一滴、この笑い声がまさに飲食業界にとってての「干天の慈雨」だな、と私は心の中でさりげなくつぶやき、アフターコロナの夜は更けていくのでありました。

天晴レ、にっぽん!

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