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[研究室学生向け] きちんと計画を立てる

論文執筆など,ある程度の時間を要するタスクを遂行する際には,きちんと計画を立て,それを守ることが肝要です。しかし,言葉にすればこんなに簡単なことでも,いざ実践しようとするとできない人が多いのではないでしょうか。

そのような人は多くの場合,きちんと計画を立てるということが具体的にはどのような作業であるのか,教わったことがないのかもしれません。ここでは,この具体的な方法を説明します。

計画を分解する

不適切な計画の例

論文執筆のように,数ヶ月かかる大きな作業を行う場合,最終〆切日を設定するだけでは計画として不十分です。なぜならば,ゴールが最後に1ヶ所定義されているだけでは,ある時点において作業が順調なのかそうでないのか判断しにくいからです。

例えば,現在が4月1日だとして,次のような計画は,計画と呼べない代物であることは明らかです。5月1日時点でどの程度書けていて,6月1日時点でどの程度書けていれば順調といえるのかまるで分からないからです。

  • 7/15:投稿〆切

適切な計画の例

この問題を解決するためには,計画を複数のサブ計画に分解(ブレークダウン)し,それぞれのサブ計画に開始・終了の日付を設定することが必要です。

例えば,次のように計画を立てることで,各タイミングで作業が順調か否かを判断することが格段に容易になります。これにより,執筆に遅れがある場合にも早期に気づいて軌道修正でき,計画通りに高品質な論文が仕上がる確率が高まることは想像に難くないでしょう。

  • 4/1〜4/14:文献調査

  • 4/8~4/21:文献調査結果の文章化

  • 4/15〜4/30:研究課題・提案手法の文章化

  • 5/1〜5/14:実験用システムの実装

  • 5/8〜5/21:実験用システムの文章化

  • 5/15〜5/21:実験参加者募集

  • 5/22〜6/7:実験の実施

  • 6/8~6/21:実験結果の分析・文章化

  • 6/21~6/30:考察の実施・文章化

  • 7/1〜7/7:未執筆部分作成

  • 7/8~7/12:先輩チェック,ブラッシュアップ

  • 7/13〜7/14:教員チェック

  • 7/15:投稿〆切

計画を可視化する

計画を可視化する必要性

上記のように計画を分解しただけでも一定の効果はありますが,この状態では感覚的な理解が難しいです。文字情報だけでは,「このあたりが大変そうだ」とか,
「この作業期間はもう少し短くても良いのでは」といったことが即座に分かりにくいのです。計画が分かりにくいということは,計画を意識して行動することが難しくなりますし,計画に不備があった場合にも気づきにくいです。

ガントチャートによる計画の可視化

この問題を解決するためには,ガントチャートを用いるとよいです。ガントチャートとは,横軸に時間,縦軸に工程を配した,スケジュール管理のための帯状グラフです。ただし,論文執筆程度の小規模な活動(注1)においては,縦軸はあまり意識しなくてもよいように思います(注2)。

注1:ガントチャートは,典型的には,数十〜数百人からなる大規模プロジェクトのスケジュール管理に用いられます。
注2:縦軸に工程を配すると,ガントチャートが縦長になって扱いにくくなります。

例えば,前述の計画は下図のように可視化できます。ソフトウェア開発現場で用いられるような大規模なガントチャートとは見た目が異なりますが,論文執筆程度の小規模プロジェクトであれば,このような簡易な書き方で十分です

簡易版ガントチャートの例

このようにすることで,日常的にも計画を意識しやすくなります。加えて,作業が大変な時期も明確になり,修正の必要性も明らかになります。例えば,「5月中旬は〆切が近い複数の作業が重なるので,実験参加者募集はもう少し前もって始めるように修正する」などといった判断がしやすくなります。

ガントチャート作成時の注意点

几帳面な人は,ガントチャートの作成を「頑張りすぎない」ことを意識すると良いでしょう。ガントチャートを徹底的に作り込もうとすると,専用のアプリケーションを用意して操作方法を修得したり,工程間の依存関係を分析して可視化したりと,作業が膨大になってしまいます。目的はあくまで計画的に論文を執筆することなどであり,ガントチャート作成に膨大な時間を割いてしまっては本末転倒です。ガントチャートは,プレゼンテーションアプリケーションや表計算アプリケーションなど,日常的に使い慣れたツールで簡単に書けば良いと思います。

計画を説明する

ここまでの作業で計画を分解・可視化できたら,ぜひその計画を他者に説明してみましょう。研究室内で定例会議があるのなら,その機会を利用するのが妥当でしょう。その機会がなくとも,自ら教員や研究室メンバに計画を説明してアドバイスを求めることをおすすめします。そうすることで,計画の精度が向上することが多いです。

自分より経験が豊かな教員・先輩や,先入観がない他人の助言を得ることで,思いもよらなかった計画の不備・改善点が明らかになることがしばしばあるでしょう。
あるいは,他者に口頭で説明する過程で,自分でもおかしなことを言っていると気づくこともあるかもしれません。

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