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パラレルワールドよろしく

「これは、、、スタジアム?」


小田原には「総構(そうがまえ)」と呼ばれる、北条氏が豊臣秀吉との合戦に備え、小田原城とその城下を囲い築かれた総距離9Kmにも及ぶ堀と土塁による溝が、今なお一部残っている。

私は日頃の運動不足解消も兼ねて、小高い丘にあるこの総構を散策していた。小綺麗に整備された自然いっぱいの場所で、気持ちが良い時間を過ごすことができた。

一通り散策を終えたので、駅の方面に戻ろうと丘を下っているところだった。自然いっぱいの景色の中に突如、古びた建物が目に飛び込んできた。


「これは、、、スタジアム?」


優に1000人は収容できそうな何かの競技場が建っていた。ちょうど丘から下ってきたところだったので、見下ろす形で中がよく見えたが、客席には誰もおらず全体的に老朽化が進んでいた。

「昔、何かのスポーツに使われてた廃墟かな。」

そんなことを思いながら建物に近づいていくと、その建物の周りに点々と警備員が立っているのに気づいた。

「競技はやってなさそうなのに、おかしいな。いたずら対策かな?」

不思議な気持ちでさらに近づくと、続々とバスが建物に到着しているではないか。中から降りてくるのは、年老いた男性ばかりだ。
皆、何かの表のようなものが書かれた書類を手に、建物の中に入っていく。

「なんで?老人オンリー??なにをしに?」

いよいよ好奇心が抑えられなくなった私は、人の流れに乗って、一緒にその建物の中に入ってみることにした。

入り口には警備員が立っている。
周囲と比較して若い女性の私は明らかに浮いていた。警備員も驚いた様子で一瞬私に目を留めたが、私が「さも当たり前」といった顔で通り過ぎるとそのまま注意の目は逸らされた。

「侵入成功だ。」

無事に建物の中に入れたことで、私は興奮していた。

入り口からはスタジアムを囲むように、ずらっと奥まで何かの窓口が並んでいた。しかし、どれもシャッターが閉じられ使われている様子はない。いたるところに椅子も設置されていたが、虎ロープが張られその半分は利用できないようだった。

建物は老朽化しており、廃墟さながらになっているにも関わらず、その中は多くの老人で賑わい、現金でのみやり取りのできる屋台まで出ていた。


なんだここは、どこかのパラレルワールドに迷い込んでしまったのか。

息を潜めながら、よく観察していると、シャッターの閉じた窓口の間に、ひっそりとATMのような機械があり、男たちはそこに何かを記入した紙を投入していっていた。

そして、その作業が終わると壁に取り付けられた大型モニターを見上げ、一喜一憂をしている....

そうここは.....



競輪場の場外車券売り場だったのだ!

テッテレー

そこは、れっきとした現役の競輪場「小田原競輪場」。あとで調べたら、その日はレースの開催はなく、他の地域の競輪場の車券(競馬でいう馬券)を購入する場所として開放されていたのだった。

1949年開設とのことだから...70年以上の歴史、なんと。


なぜレースのない競輪場に人は集まるのか

調べたところ、競馬と違い競輪は場外売り場は少なく、神奈川に関しては横浜の一箇所だけ。(東京でも一箇所しかない!)わざわざここまで足を運ぶ人が多いよう。

もちろんネットでも買えるんだけど、スマホを(おそらく)もっていないおじいちゃんばかりがここに集結していたのだった。


初心者ウェルカムな雰囲気は一切ない

これまた競馬と違い、初心者ウェルカムな雰囲気は一切ない。ルール説明も買い方も何も案内はない。一見(いちげん)さんはまったく太刀打ちできる仕様にはなっていたなかった。


あ〜びっくりした🙃

とはいえ、思いもせず非日常感を味わってドキドキしたので楽しかったな!

老朽化&赤字で廃止になる説もあるらしいので、レースがある時にまたきてみよう。


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ルールわからないまま雰囲気で買った車券はもちろん負け...その場でレースもライブ放送で観たけど、順位すらのわからなかったよ😇

おわり。



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