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1980/9/21 『レーメンの考察』

ふなを釣りにみどりが沼へ歩く
木の上で子供はなめらかに歌う
「よんひゃくえんのレーメンが」
能のうたいのように
能の舞台にすすみでる
ふなはゆるゆると岸辺にひきあげられ

幻覚はそれぞれの歩調で
哲学と名付けられたものの
重たい足どりを追いかけている
もん白蝶と野いちごは
青い統一の空間を
横むきにすべり降りてゆき
かくして透明なる思惟は
変更されたうつろの波型のように
路上の黄色い花の革命をうっすらと考える
「ひゃくごじゅうえんのラーメンが」
この立方体のにぶく輝く
寺田町のあたり

唯心論と唯物論の中華料理屋で
自らコップを手にした水はそそがれた
「たまごとキュウリとハムとが」
わさびをだしなさいこの皿のこの
ふなの口は幻覚ではない
木の上で子供は殺されている