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2022/5/26『ユダの福音書』

首を吊って死んだと言うのは嘘です
そのことはあなたもずいぶんといぜんから
しっていたでしょう
それにしても「うらぎりもの」にされてしまうのは
イエス先生が知っていればそれでいいのです
首をつっこんだのは、わたしです
何故ならわたしも「グノーシス」を知っていましたから
神の長子がこの世界を改造するために
やってくるのだと言う話を知っていましたから
ところである日先生が
「わたしの眼を直視できるものは、ここに来なさい」
とわたしたちに言われました
わたし以外の弟子はみんな黙って下を向いていました
わたしは立ち上がり先生の前へ行きました
しかしその眼を見ることはできませんでした
「あなたたちは、よくそれでわたしの弟子だと名乗れますね」
と先生は悲しそうな声でいいました
そして先生は「あとでわたしのところへ来なさい」
と言われました
首に腕をまわし「あなただけには話しておきたいことがあるのです」
と小さな声で言われた
そしてそのあとわたしは大変な決意を聞かされたのです
「わたしはこの世界の人々のために生贄となります」
「世界の改造をすれば今の人々は死んでしまいます」
「それはわたしにはできないのです」
「ですから天の父と話合いました」
「世界の改造は延期されます」
「しかしわたしは生贄とならなければなりません」
ー先生それはグノーシスの思想ですね
ーユダヤの教えではありませんね
ー先生はユダヤの神を捨てるのですか
「いいやそうではないのです」
「わたしが天の父とふたりで決めたことなのです」
ーしかし先生『聖書』のどこにもそんなことは書かれていません
ーまったく別の神と先生は話されているのですか
「本当の神とわたしは話しているのです」
「わたしは神の長子なのです」
「ユダよ、あなたはそれを疑うのですか」
ーいいえ先生、わたしはあなたが天の父の長子であることを知っています
ーしかし、神の長子のなすべきことは世界の改造です
ーそれ以外ではありえないのです
「ユダよわたしの言うことを信じなさい」
「そしてこれから言うことを実行しなさい」
「これはわたしの命令なのです」
そうしてわたしは先生の命じたとおりに実行したのです
首を吊って死んだと言うのは嘘です
わたしは生きました
それが先生の望みであったからです
わたしは生きてその後の彼等を見ていました
そして先生の死を知りました。