2022/6/28『野ばら少女』

痛みを感じる夏の川原を
裸の少女は棘のある世界の
地球儀を飛び越える
アルファベット、川岸の、情景
さみだれはこころのひだをあらう
彼等はここから戦場へ、カステラのように
恐れと痛みと悲しみと
ゴールデン日輪ははやくも手と足を
もぎとり、やさしく、抱く
極限の緯度と経度を切り取り
ここからだとカナダは見えないから
痛みは少女をウミガメにする
わたしはウミガメにする
棘のある、棘のさす、愛情のままに
川原から飛び立つカゲロウの泪のように
肉体を愛するあなたのカワラナデシコよ
夕暮れる野ばらを持つ
世界の心臓を持つ
はやく来て
痛みを感じる夏の、白い世界を、はやく来て
夕立はすべて、はやく来て
棘のある愛の
野ばら少女
そして
落日。