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2022/6/4『音楽家』

いかなる場合も、トマトの枝から
羽ばたく鳩の新感覚派の物語りとしての
ミモザの花はサイレンとともに
「嵐を呼ぶ・寄宿舎の屋根から・・・」
エジンバラの薔薇園のピンクの女王の名を持つ
君は新しい毛染めの瓶から手を離し
窓は囲まれている新しいピンクの薔薇の蕾と
改良されたネギのみどり
それらはあの頃の夜のまだ求めていた真実の愛の姿
食卓の白い皿は描かれた可憐な花の
「嵐は家々の屋根を空へと・・・」
つつましい野菜の料理が並ぶ
回転する空の人々は屋根を見上げる
あまりにもそれらは薔薇の花のように
香り、まぶしく、園芸家の眼には、苦しい
青空の色をした薔薇の花を手にする人よ
わたしは音楽家の家に生まれ、そして育った
ピアノの下でみどりの葡萄を食べた
まだ知らぬ「私の曲」を耳は聞いていた
それらのイメージの朝陽、それらの感覚の矢車草
ヒスイのきらめき、手足は音楽のレモンの香り
そして、あなたを愛した
それから、あなたを愛してしまった
わたしは音楽家の魂をビルマの寺院のスイレンの池の
ここまで来て、捨てようとして
「私の曲」のイメージ、それはやがて
雨の降り出しそうな街を離れてゆく
軽快な車から広々とした雲と丘と草原と
やがて海岸へと走る車の窓はフルに風をとばし
だからわたしは それでもわたしは 曲を作ろうと
願った 空に誓った 高い海岸の 上に立ち
それはあなたを捨てて
この風の中に
それはあなたを
思って
「愛の歌」。