見出し画像

2022/12/10 『アイス・キャット』

札幌の雪祭りの会場に
アイス・キャットが登場する
ところでアイス・キャットとは何もの?
氷で作られた猫の像なのですか
それとも猫の着ぐるみでしなやかに踊る舞踏家
それとも実際に氷漬けされた、白い猫
わたしはそれを知らない
知らないがゆえに、わたしは自由である
どのようにアイス・キャットを語ろうとも
はずれではない、永遠に
そのように考えていたら、主催者がやって来て
「仕様書どおりにやってくれ」と言う
ちょっと待った、わたしは仕様書など出していない
ちょっとその紙を見せてくれ、と言うと
渡してくれた、その紙には
「作者はみずから氷のプールへ入り
 そして氷の猫となる」
と書いてある、しかもその内容は確かにわたしのものだ
わたしは決意した
プールへ飛び込んだ、冷たくて記憶がなくなる
永遠に君を愛するだろう
永遠にわたしの愛はかわらないだろう
それは氷河の固さで、それは地球の固さで
心の中に降る雪は、キャットの眼のように開かれる
君の冬のまなざし、ベッドの中に連れて行く
愛撫する氷の、とけはじめる氷の
君は静かにくちびるを開き
永遠の隠された音韻、無限の感覚
ひたすらにわたしはきみをおもう
それはプールの中で凍った猫、
泳ぐ姿勢で、そのままで
愛情する
猫。