2023/3/29　『放送事故』

トレビアーンと言っていた彼女が死んだ
これはあまりに痛ましい放送事故である
カメラがオンエアされている時には
決してこのような事故が映されてはいけないのである
ただし今回の場合は
あまりに突然のことであったので
担当者の責任を問うことはできないであろう
しかしそうは言っても、これほどの事故は
そうめったにあるものではないのだ
テレビ局への抗議の電話が殺到したことは当然である
しかも当時の彼女の服が問題をさらに複雑なものとした
色彩学の権威と言う学者が後にこの時の映像を
細かく分析しているが
それでも人々にはその分析が納得できるものではなかった
やがてテレビ局長が謝罪の場に現れた
次にはテレビ会社の社長の会見が行われた
ついには国会でもこの問題が取り上げられた
国民の声は二つに分断され
大きな争点として近づく衆議院選でも喧々諤々と
毎日のように討論された
しかし問題は様々な方面へと波及し
いったいどのような解決方法が可能であるのか
もう誰にも判断が不可能と思えた
トレビアーン
彼女の声が何度も
わたしの耳に届く
それは何を伝えていたのか
いまではそれもわからない。