【映画の感想】万引き家族

パルムドール賞を取った映画をただで見せてもらえるってなんだか幸せだなあと思いながら、録画したやつを視聴。

生活用品を万引きで賄っている家族。
ある夜、万引き帰りに父が拾ってきたのはひとりの少女。親に虐待されているその娘を、父は「家族」として家に置くという。最初は「金にならないものを拾ってきた」と言っていた母も、姉も、兄も、少女を娘として妹として受け入れていく。

物で溢れた古い家、膝を折らないと入れない狭い湯船。それでも悲壮感はなく、貧しい家族は家族としてのびのびと暮らしている。

一人っ子で両親は共働きで、同居の祖父母が亡くなってからは本当にひとりで過ごすことが多かったから、わたしはこういう「家族」の描写によわい。永遠に泣けた。「好きだから殴るなんて嘘。好きだったらこうするんだよ」って母が娘をきつく抱きしめるシーン。親に殴られた経験なんかないけど、ぼろぼろ泣いてしまった。髪を切ってもらった娘を、父と兄と姉が「かわいい」って褒めるシーン。真夜中の空き地で、父と兄が追いかけっこをしてはしゃぎ回るシーン。家族でコロッケを食べるだけでも楽しそうでいい。

そんな日々の中で、何となく父の教え通りに万引きをしていた兄が少しずつ「違和感」を覚え始める。この違和感の描き方もすごく切なくて、「万引きは悪いことなんじゃないか」とか「自分に万引きをさせる父へのもやもや感」とかを、兄ははっきり口にできない。口に出したら、家族が壊れてしまうことをわかってたんだろうなと思う。だから言えない。言えないけど、でも溜まっていくものはある。

家族がバラバラになって、おばあちゃんのしていたことを姉がどう受け取ったのか、母の言葉を兄がどう消化したのかとか、はっきりとは描かれない。ただ、もう元には戻らないんだろうな、というのだけはなんとなくわかるから、それが切ない。

兄がバスの中で呟く、声に出さない「お父さん」と、「家族」の迎えを待つような娘の眼差しがたまらなかった。もう会えないお父さんと、もう会えない家族。兄は自ら抜け出すことを選んだけど、娘にとってあの家で過ごした日々こそが幸せだったんだろうなと思った。大人になったらちゃんと幸せになってほしい……。

たぶん一生のうちに何度も見る映画。次に見たときはまた感想がちがうようなそんな映画。観てよかった。

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