またきょうも、目が合ってしまった。彼の友人だという陶芸家からもらった、ふたつのカップと。 備えつけのキャビネットに並ぶ手づくりのカップは、鮮やかなコバルトブルーと、とろんとした飴色が特徴的だった。わたしより十センチは高い場所に置いてあるそれらは、毎日わたしを見下している。 ふいっと目を逸らし、一段下に並んでいるアラビアのマグカップを手に取った。アラビアの食器が好きだ。とくにパラティッシシリーズは、自分の名前と重ねて勝手にときめいている。社割で買えるし、少々手荒に扱ったっ
――子どものために添加物や白砂糖、発酵について勉強しました。娘が幼いころは市販のお菓子は買わず、ファーストフードもファミリーレストランも行っていません。食事はすべて手づくりです。娘が小さかったころにつくった砂糖を使わないおやつのレシピはこちら。 『華、私ね、入院しているの』 機械越しってこんなに声が変わるものだっけ。何年も連絡を取っていない母からのとつぜんの電話は、記憶に残る張りのある声音とはべつものになっていた。 「へえ……、そうなんだ」 つーん、という耳鳴りが機械越