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私の心を掴んだロードキル

 ロードキルとは、道路上で車やバイクによって命を奪われた動物や昆虫の事。私の住む地域ではロードキルを見ない日はまずない。被害に遭う動物として個人的主観ではリスが断トツで多く、次いでスカンク、オポッサムなどである。たまに鹿も見かけるが、数年に一度くらいであろうか。
 轢かれた動物達は、大きなものは恐らく行政により処分され、小さなものはヒメコンドルやカラスなどの肉食の鳥に啄まれたり、繰り返し車に轢かれる内に1週間以内には跡形もなく姿を消している。毎日見かける彼らに特別な感情を抱く事はなく、せいぜい「綺麗に死んでるな。」「派手に散らばってるな。痛かっただろうに。」「スカンクの死体、轢いちゃった。ガレージ臭くなる。」程度、私の心を揺らすのみ。
 なのに、私の心を掴んでやまないロードキルが居る。そのスカンクは職場の近くでかれこれ1ヶ月以上前にセンターラインから15cm程離れた場所で轢かれて居た。職場に向かう時には2匹のヒメコンドルが車の通っていない間を見計らって死骸を啄んでた。狭く交通量の多い道路だから、死体もすぐに消える事だろうと思っていた。職場から帰る時にはヒメコンドルの姿はなく、人間の私から見ればまだ食べれるんじゃないかと思われる部位は残って居るけれど、きっと美味しくはない部位なんだろうと自分を納得させた。次に戻って来たのは4日後で、いくらか小さくなった死体を見てもその時は何の感情も持たず「まだあるな。」と横目で眺めて通り過ぎた。
 気になり始めたのは約2週間が過ぎた頃。残っている体の部分は、尻尾と思われる黒いフワフワの長い毛のみ。凄く不思議だった。排気ガスでまみれてベタベタにならないのだろうかと。すれ違う直前に大きなトラックがスカンクの側を通り過ぎ、フワフワの毛を揺らす様子を見て執着に近い感情が芽生えた。「死んで尚、フワフワなこの子は生きていた頃はどんなに美しかっただろう?見てみたかった!」それからさらに週に2日、3週間に渡って観察を続けると、霧の濃い日はフワフワの毛はヘたれ、雨の日は地面に張り付く。流石に戻らないかと思いきや、その後気温の上がった晴れた日にはフワフワを取り戻し、通り過ぎる車に毛をなびかせる。
 なくなる気配のないスカンクの毛に私はいつまで会えるのだろう?見えなくなった時は寂しくもあるけど、ようやく安心して眠れるだろうなとホッとする自分もいるのだろう。

画像はロードキルとは全く関係なく、火事予防の為に山や原っぱに電気柵に囲まれて放されるヤギ🐐

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