見出し画像

詩55「身体の声」

36.4
36.3
36.9
36.2
36.5
37.0
36.4

君の検温記録だが
やはり
酒を飲んだ翌朝は
少し高い

体温計を
脇にはさむなんて
コロナ禍まで
年に数日あるかないか
だったのに
すっかりと
朝の日課となっている

少し熱っぽい
やや体が重い

そんな
身体の声が
聞こえなくなった

数字に
判断を
委ねて
身体を
頼らなくなったから

最近
よく
躓く

美味しいと
笑うことが
なくなった

君は
数字に
支配され
感覚が
どんどん
鈍くなり
どんどん
つまらない
人間に
なっていく

36.3
今朝も平熱だ

いや
待て
昨晩は
飲んだのに
おかしい

そんな
はずはない

計測誤り
かもしれないから
慌てて
もう一度
脇にはさみ直す

おかしいのは
体温計なのか
あるいは
君なのか

36.2
当たり前のように平熱だ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?