見出し画像

詩36「右耳」

わたしは左手で握りたいのに
アナタも左手で握りたいと言うので
右手を差し出して歩き始める

左から見た横顔が好きだから

うれしいような
うれしくないような
喜ぶべきなのか
悲しむべきなのか
分からず
考えても答えは見つからないので
ただ微妙に笑う

左右で大きさが違う
左右で形が違う

変な耳

小学校の頃
そう言われたのをきっかけに
大きくない左耳は出すけれど
大きい右耳は髪で隠すようになった

変な耳

声ははっきりと記憶しているのに
顔が残っておらず
誰なのかが分からない

これでも、好き?

大きな耳を出したら
アナタがどんな顔をするのか
見たいと思うのだけれど
勇気がない

隠し事があった方が
心がヌルくならないから
いいと思う

君のすべてが好き

そう言われたら
安心して右耳を出すけれど
まだ安心できないので出さない

どうして右耳は出さないの?

そう聞かれたら
開き直って右耳を出すけれど
今のところ開き直れないので出さない

わたしはずっと
耳のことばかり考えて歩いている

わたしは
アナタをまだ信用していないから
しばらくは隠し続ける

右耳を見せたことのない男にわたしは抱かれない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?