見出し画像

詩21「視線」

ほんの少し前へ
足を伸ばしてみる

昼間の
空席目立つ
地下鉄で

膝のトートバッグと買物袋を
横に置いてみる

私しかいない
シートだから
誰にも気兼ねなく

ずっと
真面目に
きちんと
生きてきた

些細なこと
かもしれないけど
私にとっては
けっこう
思い切りがいること

私は
常に
視線を気にしている

いつも
誰かに
見られているのだ

車内を
見渡すが
一人も
こちらを見ていない

優先席からは
鼾が聞こえる

私は
視線に
初めて
気づいた

私を
監視する
私の視線

今日
私は
私に
少しだけ
抗いたくなった

はじめの一歩
までは行かずとも
はじめの半歩
踏み出せたかな

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?