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詩19「王子と怪物」

まだ
続けるのか
もう
無理だろう

ここ数年
秋になると
ため息を吐いた

王子と
呼ばれて
十数年経つが
今でも
あの夏の雄姿を
思い出す

記憶と
期待と
現実の
深い溝

最高の
好敵手は
遠い存在になってしまった

怪物と
呼ばれて
二十年以上経つが
今でも
あの春夏の躍動感を
思い出す

記録と
栄光と
復活の
高い壁

流れ流れて
獅子に戻り
最後の輝きを目指した

とにかく
甲子園の頃から
二人が大好きだった

だから
打ち込まれ
怪我を繰り返す姿を
見るのが
つらくて
悔しかった

傷つく
必要なんて
ないのに
自ら
傷つく
道を選んでいる
ようにしか見えない

他人は
過去を見て
憐れみ
本人は
現実を見て
足掻く

二人とも
野球が
好きだから
どんなに
叩かれても
諦めなかったのだ

たぶん
それだけ

王子でも
怪物でもなく
野球少年がふたり
今年でユニフォームを脱ぐ

ため息を吐いていたはずが
別れを告げられて
揺れるなんて
勝手だな

※2021.10執筆(斎藤佑樹と松坂大輔の引退にあたり執筆)

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